今回は、ドイツのエネルギー供給事業者「E.ON社」の動向を探ります。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

世界に先駆け、エネルギーシステム分散化が進むドイツ

ドイツをはじめとする欧州は、エネルギーシステムの分散化とエネルギーサービスのワンストップ化が世界で最も進んでいる地域のひとつである。

 

欧州各国は、再生可能エネルギーの導入に関して非常に意欲的な目標を掲げている。EUは、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減する目標を掲げており、EU各国でも再生可能エネルギーの導入促進に向けた各種政策が実施されている。

 

特にドイツでは、電気料金の上昇や太陽光発電システムの価格低下に伴い、家庭部門では、電力会社から電気を購入するよりも家庭に太陽光システムを設置して自家消費したほうが電気料金が安くなる「グリッド・パリティ」にすでに到達しているともいわれている。

 

グリッド・パリティに達すると、太陽光発電を設置して自家消費することが経済的に成り立つため、太陽光発電の拡大が一気に進むことになる。

 

その点ドイツは、エネルギーシステムの分散化が世界に先駆けて進みつつある国ということができる。

欧州最大規模のエネルギー供給事業者「E.ON社」の概要

この変化に対して、大手エネルギー供給事業者は、どのように対応しようとしているのだろうか。ここでは、ドイツで事業展開を行うエネルギー供給事業者として、E.ON社を紹介したい。

 

E.ON社は、エッセンに本社を置く大手エネルギー供給会社で、エネルギー供給の顧客数が欧州全土で2200万人を超える、欧州最大規模のエネルギー供給事業者である。本社を置くドイツを含め、スウェーデンや英国、イタリア、ルーマニア、チェコなどで、電力やガスの供給を行っている。

 

E.ON社は、配電やガスの配送を行う「エネルギーネットワーク事業」、電力やガスの小売を含む「顧客ソリューション事業」、再生可能エネルギー発電所の保有・発電を行う「再生可能エネルギー事業」、および「原子力発電事業」を手掛けている。

 

これらのうち、原子力発電を除く3つの事業を今後注力する「コア事業」と位置づけ、企業買収や新規事業の開発などに積極的に取り組んでいる(以下の図表1・図表2参照)。

 

[図表1]E.ON社グループの概要(2016年)

出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

 

[図表2]E.ON社の事業内容

出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)E.ON社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

 

この話は次回に続く。

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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