そもそも会社はどういうときに倒産するのか?
以前、ITベンチャー企業が資金ショートを起こし、破産寸前の状態になったという記事を目にしました。売上が何十億円とあり、黒字決算であったにもかかわらず、倒産に追い込まれてしまったようです。この記事を見て、経営におけるキャッシュフローの重要性を改めて認識しました。
経営で最も重要なのは、倒産せずに事業を継続することです。会社はどういうときに倒産するのかといえば、赤字決算のときではなく、多くは支払い能力が不能になった状態、つまり資金が尽きた時点です。先のITベンチャー企業のように、たとえ収支決算が黒字でも目先の支払いができなくなれば倒産するのです。
逆に考えると、たとえ手持ちの現金が借金であっても、支払いができれば企業は継続するということでもあります。
筆者もこのシンプルな考えを理解し、実践しています。当社はお陰様で資金不足の心配はないものの、あえて金融機関から一定額を借り入れてプールしています。有事の際でも即座に対応し、キャッシュフローが滞らないようにするためです。
現金主義の方からすれば、金利がもったいないと考えられるかもしれません。しかし金利は会社を安定させ、継続させるための必要コストと考えています。
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金利よりも「借入期間」を重視する
このことを不動産投資に置き換えて考えてみましょう。賃貸経営においてキャッシュフローに大きな影響を与えるのは毎月の借入返済金です。たとえば、物件を検討している際、次の二つの条件のなかから借入先を選択できる場合、どちらを選ぶでしょうか。
①金利2.0% 返済期間15年
②金利3.5% 返済期間30年
ここまで読み進めてきた方であれば、およそ見当がつくと思います。正解はないのですが、キャッシュフローの重要性を認識している投資家の方は②を選ぶはずです。①の場合、ローン定数K(連載第2回参照)は7.72%、②の場合、ローン定数Kは5.38%になります。
ローン定数Kの値が小さいほどFCR(ネット利回り)との差が大きくなり、キャッシュフローが大きくなります。よってキャッシュフローを重視した場合、②を選んだほうが得策だということです。
具体例を出して、さらに詳しくみてみましょう。
物件価格:1億円
年間家賃収入:1000万円(表面利回り10%)
管理運営費:200万円
NOI=1000万円−200万円=800万円
FCR:8%(諸費用は考慮せず)
この物件を前記の二つの条件でフルローンで購入した場合、それぞれのキャッシュフローは次の通りです。
<①の場合>
イールドギャップ=FCR8%−K7.72%=0.28%
キャッシュフロー=イールドギャップ0.28%×総投資金額1億円=28万円
<②の場合>
イールドギャップ=FCR8%−K5.38%=2.62%
キャッシュフロー=イールドギャップ2.62%×総投資額1億円=262万円
借入条件①と②のキャッシュフローの差は明らかです。金利がもったいないと考えて借入①を選択した場合、15年を過ぎれば返済がなくなるため、それ以降は家賃全額が手に入ると考えることもできますが、返済期間が短い分、月々の返済額が大きくキャッシュがなかなか貯まりません。保有期間中に突発的にまとまった現金が必要となり、借入金の返済原資が不足した場合、賃貸経営に行き詰まってしまう可能性があるのです。
もちろん、その時点で新たな借入をすれば乗り切れるかもしれませんが、金利を抑えるための短期志向の借入は返済の負担を拡大させ、雪だるま式に借金が膨れ上がるリスク要因となります。
借入②を選択すれば毎年キャッシュが蓄積していくため、有事の際でも自前で支払い原資を確保しやすくなります。もしくは、累積キャッシュを次の物件取得の際の費用に充てることも可能でしょう。
このようにキャッシュフローを重視すると、金利の高い低いではなく、借入期間を考慮に入れ、キャッシュフローが回るかどうかという視点で投資ができるのです。
金融機関は債務者に対して「期限の利益」を与えています。これは決められた期限までは全額返済しなくてもよいという債務者の権利のことで、一定期間内で分割返済する取り決めがなされるのが一般的です。債務者に与えられているこの権利を最大限に活用しない手はないのです。
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