今回は、日本と韓国のビジネスにおける「決断」の違いを探ります。※本連載では、株式会社ジェイターボ・代表理事、一般社団法人Read For Action協会・リーディングファシリテーターである徐丞範氏の著書『韓国ビジネス 53の成功ルール』(合同フォレスト)から一部を抜粋し、日本での居住経験と日韓ビジネスの実績を数多く持つ筆者が、韓国ビジネスを成功に導く「相手との付き合い方」を説明します。

個人が決断するのが韓国、合意で決定するのが日本

日本と韓国のビジネスシーンで、最も「違う」と感じることの一つが、決断するのが誰かという点です。

 

韓国では、主に個人が決断を下します。小さな意思決定はそれぞれが、そして大きな方向性などは、トップダウンで決まります。

 

一方で日本は、グループでの合意を重視します。そのため、まずはマネージャーたちが話し合って決めたことを、その一つ上の役職に意見を渡します。そして、そこで変更や改善を行ってから、また一つ上の役職への回すのです。

「決まったことが変わる可能性がある」韓国企業

どちらのやり方にも、長所と欠点があります。

 

まず、韓国方式では、圧倒的にスピードが速くなります。ただしこの場合、決定したことが事情により調整や改定がなされることも少なくありません。特に、最善の決断ではなかったとわかったときは、もっとよい方向にという気持ちから、変更されることが少なくないのです。

 

これは、日本人がとても驚くことのようです。たとえば、製品をオーダーした場合、頼んだものと寸分違わないものが納品されるのが日本では当たり前です。でも、韓国企業の場合、よくいえばもう少し柔軟です。たとえば、デザインは同じでも性能がよりよい製品ができたら、バージョンアップしたものを納品します。

 

実際に、私が勤めていた機械メーカーで、よかれと思って最新のものを納品したとき、日本の企業からは、

 

「事前になぜ、こちらの許可を求めないのか」

「たとえ、もっといいものでも、なぜ勝手に変えるんだ」

 

というクレームが殺到しました。

 

そして、なんと「クオリティが落ちてもいいから、最初にオーダーしたものを納品してくれ」とまで言われたのです。

 

また、日本のやり方だと、意思決定までに時間がかかります。でも、最終的に決まるまでには、ほぼ全員の合意がなされていますから、決定事項が変更になることは、ほとんどありません。

 

また、決まったあとは、全員が同じ方向を向くため、実行するスピードは非常に速くなります。ただ、会社に持ち帰ってから、なかなか決まらないのは、韓国人にとって非常にもどかしく感じるでしょう。

 

日本と韓国の企業がうまくやっていくには、まずはお互いの意思決定のプロセスが違うことを理解することです。

 

そして韓国人は、「なかなか決まらない」と待つばかりでなく、日本側に対し「何か気になる点があればお答えします」と、何度か働きかけてみるといいでしょう。こちらから投げかければ、なぜ、なかなか決まらないのか、何が問題なのか、教えてくれることも少なくないからです。

 

日本人は、韓国企業では「決まったことが変わる可能性がある」ことを知り、どの程度の変更なら受け入れられるか、あらかじめ決めておくようにするといいのではないでしょうか。

韓国ビジネス 53の成功ルール

韓国ビジネス 53の成功ルール

徐 丞範

合同フォレスト

日本での居住経験と日韓ビジネスの実績を数多く持つ筆者が指南する、韓国人とビジネスを円滑に進め、良好な人間関係を築くために知っておきたいポイント。 日本人と韓国人の違いや特性を理解し、お互いの強みを生かせば、私…

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