「Where are you from?」「Toyota」「!?」
アメリカ人などの西欧人が、ビジネスで関係のある日本人に、「Where are you from?(どこから来たのですか)」と聞くと、本当なら、「I’m from Tokyo.(東京です)」などのように出身を答えるところ、「Toyota」とか、「Mitsubishi」と答えた人が少なからずいた、という話があります。
私も、日本人のビジネスマンと会うと、「◯△商事の山田です」「◯△電機の谷口です」と、まず社名を名乗る人が多いなと感じます。
そしてその後、別の人と話をしているときに、第三者の名前が出るときも必ず「◯△商事の山田さんのことですよね」と、社名とセットで話になります。
つまり日本人の場合、社名が個人のアイデンティティーの一部となっているのです。『世界で通用する日本人であるために』(安田信著、同文館出版)によると、典型的な日本企業では、社員は職場での時間の3割以上を社内と組織の人間関係の調整に使っているといわれています。
そのため「内なる輪」以外に気が回らずに、世界に興味がないと外国人からは思われているというのです。
韓国が大切にするのは「個人のアイデンティティー」
韓国人の場合、「終身雇用制度」が崩れ、成果主義が広まっていることから、そこまで自分が属する組織に愛着を持っていません。よい会社で働いていればそれなりに自慢にはなりますが、だからといって、私は「◯△社の徐である」とは思わないのです。
日本人からすれば、社名ではなく個人でのアイデンティティーを大切にする韓国人は、自己主張や押しが強いように見えるかもしれません。でも、韓国人からしてみると、必要以上に社名をアピールされると「個人として、自信がないのかな」と感じることがあるのです。
前回お話ししたように、韓国人とのビジネス関係をスムーズに運ぶには、個人と個人の付き合いがとても重要な位置を占めます。
「◯△社の山田」ではなく、一個人としての「山田太郎」として、自分の考えや趣味を持ち、そこから交流できる、そんな風に関係を築いていきたいものです。