一代で11の医療・介護施設の開業に成功した医師の軌跡から、事業拡大における極意を見ていく本連載。今回は、その第25回です。

集患に必死だったクリニックも、ベッド数が限界に

3番目に開業したのは、八街駅前の「東葉クリニック八街」です。こちらは誰もが忘れられない波乱の年、1995(平成7)年の開設となりました。この年の1月には阪神淡路大震災があり、3月にはオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が起きたのです。

 

八街の開業には、またちょっとした事情があります。あれほど苦労して患者さん集めに必死になった2番目の八日市場が、旭中央病院と医療連携をしてからそれなりの評判となり、ローテーションを組み直しても、そろそろベッド数が限界になってきたのです。

 

もっと拡張しなければ間に合わないと思っていた矢先、地主でもある八街の患者さんから、「うちの土地を貸すから八街に施設をつくってくれないか」という依頼があったのです。今まで土地探しでさんざん苦労をしてきましたから、これは願ってもない話です。早速、その土地を見に行くことになりました。

 

確かに広さは申し分なく、坪単価もそれほど高くはありません。ただ、ちょっと場所的には駅から奥まっているところが気になりました。前述のとおり、千葉県は「車社会」ですから、それほど気にする必要はないのかもしれません。それでも、なんとなく「ここはどうだろうか?」という不安があり、せっかくの話だったのですがお断りしました。

 

ただ、八街に3番目の施設をつくることについては、立地的にも問題ありません。こうして八街の周辺で土地を探している時、「これは」と思う場所を見つけたのです。声を掛けてくれた地主さんのところほどは奥まってはおらず、土地価格も広さも申し分ない感じのところでした。

京葉銀行の提案で、八街駅前の最高の立地を購入

良さそうな場所なので契約に動き出そうとした矢先、ずっと親しくしていただいている京葉銀行の頭取から連絡がありました。

 

その内容とは、「八街の支店を移動するので、現在の場所が空く。そこに施設を開いてはどうか」ということでした。場所はほぼ八街駅の前という最高の立地。しかもビルがもうすでにありますから、多少のリフォームをすればすぐに使えるというメリットがあります。また、京葉銀行の頭取から直々に話をいただいたという経緯もあります。

 

私はそれだけで舞い上がり、即OKの返事をしてしまいました。しかし、後々計算してみると、坪単価が先に見つけた土地よりも倍近く高いことが分かりました。ただ、日頃からお世話になっている京葉銀行の頭取の前で喜んで申し入れを受けた以上、びた一文も値段を下げる交渉もせずに銀行の言い値で購入しました。

 

この話は次回に続きます。

ドクター・プレジデント

ドクター・プレジデント

田畑 陽一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

医療者である開業医が突き当たる「経営」の壁。 経営者としてはまったくの“素人”からスタートした著者は、透析治療を事業の柱に据えて、卓越した経営センスで法人を成長させていく。 徹底的なマーケティング、2年目で多院展…

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