一代で11の医療・介護施設の開業に成功した医師の軌跡から、事業拡大における極意を見ていく本連載。今回は、その第30回です。引き続き、多数の施設展開について見ていきましょう。

父が残した病院を守るため、提携を決意

前回の続きです。ここで少々、関連施設のお話をしておきましょう。

 

現在、東葉クリニック以外に、医療法人三橋病院、医療法人社団本郷会の本郷内科、鎌取内科、医療法人社団櫻佑会昭和の森クリニックという4つの関連施設をグループ傘下に置いています。

 

最初に提携したのが三橋病院です。2008(平成20)年に提携に合意しました。その理由に関しては、三橋病院の理事長である三橋啓司氏が明生会の記念誌に寄せてくれた挨拶が簡潔に説明してくれています。

 

ことの発端は、三橋病院の経営存続が危ぶまれたからです。三橋病院はもともと啓司氏の父上が戦後に開業した総合病院でしたが、父上もご兄弟も他界され、病院自体の経営にも行き詰まりが出てきました。

 

特定医療法人という立場だった三橋病院は、閉院すると資産は国に帰属してしまいます。それを免れるためには、別の医療法人に継承してもらうしかありません。父上の残された病院を守りたかった啓司氏は、ある方からの紹介を受けて私と出会うことになりました。三橋病院は総合病院でしたから、内科から外科、整形外科などを持っています。

 

病院を見せていただくと、立派な造りで医師も4人、スタッフも大勢います。また入院設備については、明生会の東葉クリニック大網にはベッドがわずか19床しかなかったのですが、三橋病院には71床あり、透析患者のなかでも悪化している方の入院受け入れ先としてとても魅力的でした。

 

これまでは自分で施設を建ててきましたが、提携するというのも一つの手段であると考えました。

 

人工透析に取り組んでいただく条件で提携することができれば、お互いに喜ばしい結果となります。結果的にその話がうまくまとまり、全スタッフと病院を丸ごと引き受けることになったのです。人工透析ができるうえに、他分野の診療もできるのは、こちらも願ったり叶ったりです。このような経緯で、父上の残された三橋病院の存続が可能となったのです。

新規の医療機関への対抗策としても提携は有効

また本郷会はこれまで私たちがあまり目を向けていなかった幕張新都心の方面にある、内科を中心としたクリニックです。新しい街並みの中にしゃれた施設が続々とオープンする、そんな一帯です。

 

高層マンションが立ち並び、多くの人々が集まるのですから、どうしても医療機関が必要になります。

 

そのとおり、幕張周辺には次々と新規の医療機関が押し寄せてきました。そんななかで地場を引き継ぎ、伝統を守ってきた本郷会は苦戦を強いられていたのです。そこで、知己の間柄だった本郷会の金井美紀理事長と相談し、こちらも法人丸ごと引き受けることになりました。

 

この話は次回に続きます。

ドクター・プレジデント

ドクター・プレジデント

田畑 陽一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

医療者である開業医が突き当たる「経営」の壁。 経営者としてはまったくの“素人”からスタートした著者は、透析治療を事業の柱に据えて、卓越した経営センスで法人を成長させていく。 徹底的なマーケティング、2年目で多院展…

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