組織にも、人と同じように「感情」がある!?
数年前から、「ストレス社会を乗り切る」といったフレーズや「イライラしてキレる人の増加」というニュースをよく見掛けるようになりました。
それだけに、近年、「怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング」であるアンガーマネジメント(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が普及促進)が注目されており、同協会への講師派遣やコンサルティングの依頼が続いています。
事実、同協会のファシリテーター資格を有している私のもとにも、月2〜4回のペースで、アンガーマネジメントに関する企業研修や執筆の依頼が寄せられています。
職場における「イライラ」や「不機嫌」について取り上げた書籍といえば、2008年に出版された『不機嫌な職場なぜ社員同士で協力できないのか』(河合太介、高橋克徳、永田稔、渡部幹共著、講談社現代新書)が挙げられます。
それと関連して、沖縄県の人材育成推進者養成講座でも講師を務めていただいている、明治大学専門職大学院教授・野田稔氏が筆者に名を連ねている『あたたかい組織感情ミドルと職場を元気にする方法』(野田稔・ジェイフィール〔重光直之・高橋克徳〕共著、ソフトバンククリエイティブ)では、組織にも人と同じように感情があるという新しい考え方を紹介しています。
急いでいるときに限って印刷ミスをしてしまう理由
この組織感情(※)の考え方は「職場の基礎代謝」を概念化する上で、大いにヒントになったものですので、一部ご紹介したいと思います。
(※)組織感情は、㈱ジェイフィールの商標登録です。
具体的には、「組織の活性度」を縦軸、「組織に広がる快・不快の感情」を横軸とし、それぞれに「①イキイキ職場(高活性+快感情)」「②あたたか職場(低活性+快感情)」「③ギスギス職場(高活性+不快感情)」「④冷え冷え職場(低活性+不快感情)」の4つに分類します。
[図表] 組織感情と活性度の4分類
同書の考えを当てはめると、「①イキイキ職場」と「②あたたか職場」は〝ご機嫌〞で〝基礎代謝が高い〞職場となります。社員がイキイキと働き、持てる能力を実力として発揮しているため、生産性も自然と高くなります。
一方、「③ギスギス職場」と「④冷え冷え職場」は、〝不機嫌〞で〝基礎代謝が低い〞職場となります。精神的に余裕がなく、心の安定が保たれていないため、些細なことに対しても、過剰に反応してしまい、結果としてイライラが募ります。
そうなると、仕事のパフォーマンスにも影響が出るようになります。身近な例としては「急いでいるときに限って、印刷ミスをしてしまう」という状態です。
普段できていることが、イライラすると難しくなり、結果として、二度手間や手戻りが多く発生します。さらに、役職者であれば、今後の事業に対して大きな影響を及ぼすような、重要な局面で、判断ミスをしてしまうケースも見受けられます。