個人のワークや部下へのフィードバックに活用を
さて、研修は受講生の皆さまと一緒に、職場にある「不」についての意見を出し合いながら整理し、研修自体の基礎代謝も高めつつ、さらに理解を深めていただくことができます。しかし、本連載をお読みいただいている方とは、研修のように時間と空間をご一緒することが叶いません。
そこで、職場にある「不」をまとめてみましたので、個人でのワーク、部署や会社全体でのワーク、あるいは、部下に対する面談やフィードバックの際、一つの切り口として、活用してみてください。
それぞれの関係性(連動性)は、受講生の方からの意見や、人材・組織に関する書籍やレポートなどを参考にまとめてあります。業種・業界や立場・役職によって、多少違いがあると思いますので、その際は、ぜひオリジナルのものを作ってみてください。
問題を細分化し、解決可能な「課題」として捉える
以下の図表は、職場における「不」の関係性を円すい型で表したものです。中心(頂点)に「不機嫌(不満)」、その外側に「不信・不遇」「不足・不安」「不快・不便」があります。さらにその外側に「不明瞭・不一致・不信任」「不十分・不理解・不自然」「不案内・不透明・不自由」があります。
[図表] 職場における「不」の関係性(連動性)
加えて、分かりやすいようにこれらを次の3つの系統――「信用・信頼系統(上司と部下との関係、方向性と判断基準など)」「安心・安全系統(職場の人間関係、情報の質と量、能力とのバランスなど)」「快適・便利系統(組織運営や人事制度、働きやすさと働きがいなど)」にケース分けをしました。
■ケースA(信用・信頼系統)
上司から仕事を任せてもらえない(不信任)→細かく口出しする上司に「不信感」を持つ→能力に合った仕事をさせてもらえない「不遇感」が芽生える→「基礎代謝」が低下する→「パフォーマンス」が下がる→「不機嫌(不満)」になる。
■ケースB(安心・安全系統)
新たな事業に関する情報が「不十分」である→仕事に対する内容理解が「不足」する→「不安」な気持ちを抱えたまま仕事をする→「基礎代謝」が低下する→「パフォーマンス」が下がる→「不機嫌(不満)」になる。
■ケースC(快適・便利系統)
権限がなく「不自由」な状態にある→少額でも上司の稟議決裁が必要で「不便」に思う→上司不在で稟議決済が遅れて「不快」に感じる→「基礎代謝」が低下する→「パフォーマンス」が下がる→「不機嫌(不満)」になる。
この関係性(連動性)に気づくことができれば、職場全体や部下との間にある「不」を探すのは、そんなに難しくありません。
人手不足の上に採用難が続き、「動いてほしいのに動いてくれない」「育ってほしいのに育たない」「続けてほしいのに続かない」といった声が多く挙がる日本の職場。
この人材や職場に関する悩ましい「問題」を、極めてシンプルな「不」の解消という切り口で細分化し、解決可能な「課題」として捉えられるようにする。これこそが、「職場の基礎代謝」という考え方の重要なポイントです。
職場に存在する「不」を一つ一つ解消することで、「不機嫌」な職場を「ご機嫌」な職場(信用・信頼×安心・安全×快適・便利な職場)に変えることができるのです。