実力低下を招く「不機嫌な上司」「不明瞭な指示」
ここでは、「職場の基礎代謝」を下げる原因である、職場に存在するさまざまな「不」について考えてみます。
一例として、「不機嫌な上司」「不明瞭な指示」「同僚への不信感」「将来への不安」などが挙げられるでしょう。それを「能力×不○○=実力(パフォーマンス)低下」という公式にあてはめたものが以下の図表です。皆さまも思い当たる節はないでしょうか。
[図表] 実力(パフォーマンス)低下を引き起こす「不」の種類
①「能力×不機嫌=実力低下」については、自戒の念をこめて書いているのですが、なかなかどうして、イライラすることが多いのも事実です。それもあり、私自身が「アンガーマネジメント」のファシリテーター資格を取得し、職場や個人の不機嫌を取り除くお手伝いをさせていただいています。
②経営理念や行動指針を朝礼などで唱和するのみで、スタッフに「腹落ち」感がない場合も、「能力×不明瞭=実力低下」に当てはまります。特に、接客などのサービス業では、スタッフが現場で、個々人で考えて対応するため、理念や指針(=判断基準)の浸透がなおさら重要です。
③「能力×不信感=実力低下」についは、前職のパッケージソフト(旅行業における営業から経理までの業務を標準化して管理するシステム)の導入サポートの際に、多く経験したことがあります。
パッケージソフトを「仕組み」として考えると、各社の運用ルールは「仕掛け」となりますが、「仕組み」は同じものを入れても、「仕掛け」がうまく機能しないと、システムの導入効果が薄れてしまうことが度々ありました。
典型的なのは、「営業部門」と「経理部門」、「仕入部署」と「企画部署」といった部門・部署間、あるいは「経営側」と「課長クラス側」といった役職間での不信感です。
「ムダ・ムラ・ムリ」な状態を改善していく
運用ルールを決める際、「このシステムは、経理側に寄ったシステム!営業の負荷が増えるばかり」や「社長はシステムで私たちの数字を把握しようとしている!信用していないのか?」といった声が出ないように、会社としての目指すべき効果をふまえた上で、双方からの意見・要望を聞き出し、システムの導入効果が出る着地点を探すことが求められました。
④特定の人に仕事が集中する、Aさんにしかできない仕事が存在するといった場合、そのAさんが出張や病欠で不在となると、組織としての活動が一時停止に陥るのは「能力×不自然=実力低下」状態であるといえるでしょう。組織である以上、できるだけ不自然つまり「ムダ・ムラ・ムリ」な状態を改善していくことが求められます。
⑤その他にも、重要な情報が現場に行き届かない不浸透職場、スタッフが互いを理解できていない不理解職場があります。
あるいは、新しい事業領域への挑戦で様子がつかめない不案内職場、決裁の範囲が狭く、稟議決済の多い不自由職場などもあるでしょう。
他にも先代社長(現会長)と二代目社長とで判断基準が違う不一致職場、上司が細かく指示をして、部下を信じて任せない不信任職場など、「職場の基礎代謝」を下げる「不」は数多くあるのです。