銀行にも個人にもメリットのある「資本性借入金」
④「資本性借入金」
そのメリットを悪用した商工中金事件
「少人数私募債」は、負債であるけれども、
銀行の財務評価では「自己資本」とみなされます。
いわゆる「資本性借入金」ですよ。
と、申しつづけております。
つまり、「少人数私募債」を発行することで、自己資本比率が上がり、
銀行格付け(スコアリング)にプラスのメリットがあるのです。
この「資本性借入金」の条件は、主に3つです。
①「弁済順位が低い劣後性があること」(無担保・無保証)
②「償還期間5年以上の一括返済であること」
➂「配当可能利益に応じた金利設定であること」
と、金融庁のマニュアルに示されています。
誰から借りたかではなく、どのような条件で借りたか、なのです。
なので、金融機関も「資本性借入金」の商品をもっています。
特に、政府系の金融機関です。
「資本性借入金」としてお金を貸すことは、
銀行にも、大きく4つのメリットがあるのです。
①銀行員個人の融資成績が上がる。
②銀行全体の融資金額が増える。
➂貸したお金は資本とみなすので、貸し先の債務者区分を上げることができ、
銀行の貸倒引当金を減らせる。 → 銀行の自己資本比率を上げられる。
④通常よりも高い金利設定ができる
メリットを受けようと財務表を不正改ざんした商工中金
銀行自身が、これらのメリットを受けようとして行われたのが、
「商工中金不正融資事件」です。
そうです。今回問題になった商工中金の「危機対応融資」にも、
資本性借入金が含まれているのです。
「危機対応業務による資本性劣後ローン」という商品です。
おそらく銀行員はこう言ったのでしょう。
“無担保・無保証で毎月の返済はなく、
5年間据え置き、そのうえ自己資本とみなしますよ。”
応じる社長が多かったのは、想像できます。
ただし、業績が良い会社は対象外なので、
貸すために財務諸表を悪く改ざんした、ということです。
この改ざんも、どこを改ざんしたか、です。
おそらく、営業利益や経常利益が悪くなるよう、
販売管理費を増やし、特別利益を増やしたのです。
そうすれば、改ざんしても、財務諸表類のつじつまを合わせられます。
営業利益を悪化させて業績が悪い、
ということにしたのだと、考えられます。
で、本当は業績の良い会社に、危機対応融資をしたのです。
融資後の決算書は、改ざんせずに通します。
当然、営業利益は元の良い数字に戻っています。
まさに融資のおかげで業績回復したかのように見せれます。
つまり、商工中金の不正融資事件は、
銀行や銀行員が「資本性借入金」の恩恵を悪用するため、
組織ぐるみで行った不正行為だった、と察するのです。