いわゆる「歩積預金」と「両建預金」のこと
銀行を舞台にした小説や、銀行マン向けの書籍を読んでいると、
業界特有の用語が出てきます。
その言葉の意味を知るほどに、銀行はつねに、
いかにして自分たちの立場を有利にしようとしているか、
しか考えていない、ということがわかってきます。
➂にらみ預金
いわゆる、歩積預金と両建預金のことで、
銀行用語では、「にらみ預金」という言葉として、
小説などに登場します。
歩積預金は、銀行が手形を割り引く際に、
その一部を預金に割り当てて、債権保全に活用することです。
両建預金は、銀行が貸しつけた資金を定期預金などにさせ、
債権保全や預貸率向上に活用することです。
いずれも、拘束性預金と言われ、
金融庁は銀行に対し、
そんなことはしてはならぬ、と規制をしているのです。
例えば決算書を拝見したときに、
負債に短期借入金があるけれども、
それを返済できるだけの十分な現預金を抱えている、
というケースがありました。
「これだけ現預金があるんだったら、
短期借入なんて返せばいいじゃないですか!」
と経営者に言います。
すると、次のような返事がきたりします。
「実は・・・使えない現預金があるんです。」
「使えないって、どういうことですか?」
「定期預金なんですけど・・・」
「ひょっとして、両建預金ですか!」
「そうなんです・・・。
でもこれがあるから、長期借入ができているんです。
定期を解約して短期を返すなんてしたら、
次は借りれないかもしれないので・・・」
銀行が渋るなら「金融庁に問い合わせます」と言うべき
私にすれば、いつの時代の話しをしているんだ、という返答内容なのです。
「そういうのは、銀行用語で“歩積両建預金”といって、
金融庁は銀行に、そんなことはしてはならない!
と監督指針で定めているんですよ!」
「えっ、そうなんですか!」
「そうですよ!
定期預金の解消と短期返済を申し入れて、渋るようなら、
“金融庁に問い合わせてみます。”
と言えばいいんですよ。」
となり、両建預金は解消されたのです。
それだけで、金利が減り、総資産が減ります。
金利が減った分、経常利益は向上し、
総資産が縮んだ分、自己資本比率も向上します。
よいことづくめなのです。
さすがにこの数年は、新たな「にらみ預金」を
銀行が求めてくることは少ないかもしれません。
しかし、過去にそのような拘束性預金を強いられ、
そのままになっている、というケースは今も存在するのです。
そのような預金があれば、すぐに解消の交渉をしてほしいのです。