「金利を下げるから、完済しないで」という意味
最近の銀行は、新卒採用に苦戦し、
現状の支店長クラス・課長クラス人材をも売りに来る、
と申し上げました。
すると今度は、
「うちは“金利を下げさせてください!”て、
担当者が言ってきました!」
というお声を聞きました。
これには驚きです。
「えっ! で、どう下げるって言うんですか?」とたずねました。
「現状0.7%を、0.3%に、です!」
現状、日銀が公開している新規融資の平均約定金利は、
0.69%です。
なので、0.7%という金利は、いわば相場並みです。
正直、その会社の財務状況なら、
0.3%でも、まだ下げる余地が十分にあるくらいです。
「で、どうしたんですか?」
「もちろん、下げてもらいました。」
「銀行から金利を下げると言ってきた意図、わかります?」
「いや、なんでしょうか。」
「金利を下げるから、返さないでくださいね。
という意味ですよ。」
「なるほど。そうですね。返そうと思えば返せますから。
他の銀行への借り換えもできますし。」
「そうですよ。言ってみれば、恩を売りにきたんですよ。」
金利を下げてでも、融資額を維持しようという作戦に・・・
その銀行は、元は地域の相互銀行です。
現状でいうところの、第二地銀です。
メガバンクも第一地銀も、同じライバル銀行として融資先の
奪い合いをしている現状、第二地銀は劣勢を強いられています。
そんななか、最もいやなことは、3月末決算を控えて、
融資額をばっさり返済されることです。
そんなことがあると、穴埋めのための融資を、
他の企業で早期に獲得しなければなりません。
いまどきの地方では、至難のワザです。
だから、先手を打って、
金利を下げてでも、融資額は維持しよう、
という作戦に出たのです。
そのほうが、
銀行担当者は自分の身を守れるからです。
金利率よりも、融資額維持が重要なのです。
金利を下げさせてください、
と銀行が自ら言ってくるなど、
これまでは考えられませんでした。
しかし、今やそんな時代なのです。
ただし、見方を変えれば、
そこまでハードな金利交渉をしていなかった、
ということでもあります。
下げる余地があったのですから。
銀行が今、最も嫌がることは、融資額を全額返済されることです。
逆に、最もうれしいのは、融資額が増えることです。
そのことをよく理解し、
年度末の銀行交渉にあたってほしいのです。