形だけのリスク説明で外国債券を売っていた銀行
だましファイル④「デリバティブ商品と外国債権」
平成16年、銀行での証券仲介業務が解禁されました。
〇〇〇債といった外国債権や、
円/ドルの先買いデリバティブ商品などを、
銀行が販売してもOK、となったのです。
その数年後、ある女性経営者から相談を受けました。
「銀行にだまされました!
絶対に上がるといわれてランド債を買ったのに、
上がるどころか、だだ下がりです!」
私は、そもそもランド債がわかりませんでした。
「ランド債って、何なんですか?」
「ご存じないですか?
南アフリカ共和国の通貨が、ランドなんですよ!」
こっちはランドなる通貨など、気にしたことがありません。
「どうしてそんな、
行ったこともないような国の債権を買うんですか?」
と尋ねると、
「いやぁ、銀行の担当から、
これからはブリックスの時代ですよ!
今のうちに買っておけば上がりますよ!と言われて…。」
「買うお金はどうしたんですか?」
「その銀行から、半分くらい借りました・・・。あとは自己資金です。」
で結局、損切をして、ランド債を売却し、借入返済にあてたのです。
「リスクがあるとの説明は、銀行から受けなかったんですか?」
「たぶん受けてると思いますけど、はっきり覚えてません・・・。」
そうなのです。
銀行は形だけの軽いリスク説明で、
外国債券の売買契約をじゃんじゃん取っていったのです。
腹立たしいほど字が小さい「リスク・手数料」の説明文
さらに大きい被害となったのが、
円/ドル先買いのデリバティブ商品です。
しかも、貿易などない、円/ドル先買いなど、
必要のない会社にまで、売りつけていたのです。
財務担当や経営者が、説明を受けたところで、
その複雑な仕組みやリスクを理解できるわけがありません。
売っている銀行員も、知識の程が怪しいのですから。
「円安になれば儲かりますよ。」とそそのかし、
億単位でドルの先買いをさせ、購入資金を貸したのです。
しかしその後はますます、先の見えない円高に陥り、
多くの会社が多額の損失を計上させられました。
しかも銀行は、自分たちだけは損を被らないよう、
貸付先の損失処理にまで、介入してきたのです。
銀行の流れにおされて損を確定させた会社は、
損失処理で、さらに借金が増えました。
そのとき、
私たちのもとに相談に来た会社だけは、
銀行からの損失処理要請にのらず、粘り続けることで、
円安局面まで耐え、損失をださずに処理できたのです。
粘り勝ちです。
リスクを十分に説明すれば、はっきりいって、
誰も買わないでしょう。
それが、いくら金融庁が「十分にリスクを説明しなさい」
と言えど、リスク説明のもめごとが絶えない理由なのです。
それに、儲かる・得をする、という言葉を受けた瞬間、
リスクのことなど頭に入ってこない経営者が、多いのです。
今も新聞では、外国債権などの広告をよく見かけます。
それを見るたびに、
リスクや手数料の説明の、文字の小ささに、腹が立つのです。