平成12年に創設された「特定社債保証制度」
だましファイル➂「社債引き受け業務の拡大」
「銀行の社債には、やられました・・・。」
という声を、いまだによく聞きます。
銀行破綻が相次ぎ、貸し渋りが問題化するなか、
平成10年に、社債発行の自由化が行われました。
企業による社債の発行が、しやすくなったのです。
さらに平成12年に創設されたのが、
「特定社債保証制度」なるものです。
銀行や保証協会が基準を設けて、
中小企業の社債発行を引き受けてもいいですよ、
という制度です。
「銀行の社債にだまされた!」という起源は、ここにあるのです。
金融機関がいっせいに、社債引き受けの審査をするための
「適格基準」という自主基準を設けたのです。
「御社の財務状況からしますと、
私どもの適格基準に該当しておりまして、
社債の発行を引き受けることができますよ。」
「社債、ってなんですか?」
「普通の融資は、お客様からの預金を元にした、間接金融です。
社債引受けは、預金ではなく私共の資金を提供する、直接金融なんです。」
「ほう・・・。」と、わかったような返事をします。
さらに、
「ただし、それには適格基準という条件がありまして、
御社のような、財務状況が優秀な企業にしか取扱いのできない、
限られた、特別の制度でございます。」
「そうなんですか!」
と、銀行のおだてに嬉しくなり、少しくいついてしまいます。
「金利や返済条件も、優遇されていますよ。」
「えっ、そうなんですか。」
と、くいつきが激しくなります。
「通常融資に比べて、金利を低く設定できますし、
毎月の返済がなく、償還時の一括返済で結構なんです。」
「それは資金繰りがラクですねぇ!」
と、かなりその気になってしまいます。
「そうなんですよ!
それに、社債を発行されたことが、新聞にも掲載されます。
これは、社会的信頼の向上にもつながりますよ。」
と、よく考えればわけのわからないことまで、
誘い文句として浴びせてくるのです。
で、いい気になってしまい、
「わかりました。ぜひ、お願いします。」
となるのです。
社債発行の際に、様々な「手数料」が発生し・・・
そのあとに、
「社債の引受けにあたり、いくつかの手数料をいただきますので、
ご了承ください。」
と言われるものの、いい気になっているので、
「結構でございます。よろしくお願いします。」
と、社債発行へ向けて、動き出すのです。
すると、財務代理人手数料、登録手数料、
引受手数料、元利金処理手数料、償還時までの保証協会保証料、
などなど、あらゆる手数料が津波のごとく襲ってきます。
そこではじめて、
「やられた!」となるのです。
バブル崩壊からまだ10年もたっていない当時、
資金調達に苦しむ経験をした中小企業が多かったのです。
そんな折、社債発行という、
特別感のある融資は魅力的に映ったのです。
とはいえ、最近になってもまだ、
決算書に「社債」という負債項目を見かけるのです。
「これは銀行に、してやられましたね。」と言うと、
「そうなんですよ・・・。」との返事がきます。
「社債引き受け」というだまし商品は、今も健在なのです。
どうか、お気をつけ下さい。