前回に引き続き、会社の一部売却における「会社分割」と「事業譲渡」の比較を見ていきます。今回は、会社分割の手続き方法を見ていきましょう。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

「新設分割」活用の際は、事前に買い手の意向を確認

前回の続きです。

 

(3)会社分割の手続き

新設分割は、新会社を設立することであるから、その会社の商号、目的、本店、役員等について検討しなければならず、親族外承継(M&A)の前に買い手の意向を確認しなければならない。その際、買い手の意向に沿わない新会社が設立されないよう、その内容が譲渡契約書のクロージングの前提条件とされるケースもある。

 

分割対象となる事業が許認可を要する事業である場合には、許認可を引継げるかどうかが重要となる。許認可を引継げない場合には、通常の方法で先に新会社を設立し、先行して許認可取得後、新設した会社を承継会社とする吸収分割を行うこともある。

 

なお、許認可の承継ができないことによって親族外承継(M&A)が破談になるケースもあるため、事前に許認可を主管する行政機関等と協議しておかなければならない。

権利義務等を「どのように移転させるか」が重要

会社分割の手続きにおいて、権利義務や契約関係、資産および負債をどのように移転させるかが重要である。主な資産および負債の移転における注意点は以下のとおりである。

 

(1)預金

分割対象に含める場合は金融機関への相談が必要である。

 

(2)売掛債権  

いつからの入金される売掛金を移転させるか決める必要がある。得意先の都合もあるため(振り込み先の銀行口座が変わってしまう。)、先方の対応が間に合うかどうかも重要である。

 

(3)不動産

担保設定されているケースが多いため、移転にともない担保を引き継ぐかどうかについて金融機関への相談が必要でなる。

 

(4)支払債務

買掛金については売掛金と同様、いつから支払われる買掛金を移転させるか決めておく必要がある。特に、支払手形の移転は難しいため、移転の対象としないケースが多い。手形債務を承継会社に移転させるのであれば、支払いは分割会社で行い、分割会社からの求償権の行使にともない、承継会社から分割会社に送金するような方法も考えられる。

 

(5)未払費用

経費の未払分の期間配分については、理論上は、会社分割の実行日(=新会社の設立日)を基準として、それ以前の期間で発生したものは分割会社に、それ以後のものは承継会社に負担させる。しかし、実務上は取引先との間で会社分割を理由に期間損益を按分することは難しいため、移転の対象としないケースが多い。

 

(6)未払税金

法人税等、消費税いずれも移転できない。

 

(7)契約関係

会社分割の対象となる事業に関する契約、たとえば賃貸借契約などの契約を分割対象とした場合、その契約に基づく権利義務関係は承継会社に移転するが、事前に契約の相手方に連絡しておく必要がある。

 

(8)繰越欠損金

繰越欠損金は移転させることはできない。

 

この話は次回に続く。

 

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