承継会社の資本金が1億円超だと外形標準課税の対象に
前回の続きである。
(4)会社分割の税務
非適格分割を行った場合には、承継会社が発行する株式の時価が「資本金等の額」となる。そのため、会社分割の結果として承継会社の資本金等の額が予期せず大きくなってしまい、資本金等の額に応じて決定される住民税均等割の負担が重くなることがある。
また、会社分割の結果、承継会社の資本金が1億円超となってしまった場合、外形標準課税の対象となるため、実務上は承継会社の資本金が1億円超にならないように工夫するケースが多い。
分割対象の資産が大きいために資本金が1億円超になることを回避できない場合には、株式会社ではなく合同会社の設立に変更することによって資本を小さくするように検討することもある。
会社分割により不動産を取得した場合には、原則的に不動産取得税が課される。ただし、以下の要件を充足するときは、不動産取得税は課されない。それゆえ、分割対象に課税標準の大きな不動産が含まれている場合、次の要件を満たすようにしておくことがポイントとなる。
①分割において、分割会社の株主に対して金銭等が交付されないこと
②分割事業に係る主要な資産および負債が分割承継会社に移転していること
③分割事業に係る従業者の80%以上に相当する者が、分割後に分割承継会社の業務に従事することが見込まれていること
④分割事業が分割承継会社において継続的に営まれることが見込まれること
分割会社の税制適格性について、親族外承継(M&A)を前提とする会社分割は「株式継続保有要件」を満たさないため、非適格再編に該当する。したがって、分割会社の資産および負債は時価で承継会社に移転するとともに、譲渡益に対して法人税が課される。
同族株主間での親族外承継(M&A)を前提として非適格再編を行うのであれば、株式の発行価額は税務上の時価を使えばよい。しかし、純然たる第三者間取引の親族外承継(M&A)を前提として非適格再編を行う場合、株式の発行価額は、株式譲渡における取引価額と同額とすることになるだろう。
本社費用を適切に按分し、事業部の財務諸表を作成
(5)事業部の価値評価
公正価値評価にDCF法を使う際、親族外承継(M&A)の場合と異なり、事業部売却を行う場合には、その対象事業の評価に際して特有の問題が発生する。それは、事業部をスタンドアローンで評価しうるような財務データが作られていないケースが多いということである。
そもそも中小企業の場合、事業部ごとに財務諸表が作られているケースは少なく、過年度の実績データの推移がわからないことが多い。このような場合には、過年度の会計情報を掘り起こして事業部単体の損益データを作成しなければならない。
もちろん、会社の決算と異なり、事業部の財務諸表の作成に関して、特に定められた方法があるわけではない。しかしながら、対象事業に関する収益性を買い手に対して適切に開示するためには、GAAPへ準拠し、本社費用を適切に按分して事業部の財務諸表を作成すべきであろう。
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