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親族外事業承継(M&A)における「経営統合」の手続き②

前回に引き続き、親族外事業承継(M&A)における「経営統合」の手続きを説明します。今回は、買い手にとっての事業価値を実現する統合作業について詳しく見ていきましょう。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

取引実行前から、統合の事前準備を行うことが望ましい

前回の続きである。第三者承継が実行されると、形式的には事業承継は終わりとなるが、買い手にとっての事業価値を実現するための統合作業は、ここからがスタートとなる。

 

第三者承継による事業承継のメリットは、買い手とのシナジー効果を発揮させ、事業価値を高めることである。両社ともに不足する事業価値源泉を補完する、あるいは、自社の強みをさらに強化するといった目的もシナジー効果の発揮によって初めて実現する。

 

事業承継の現場では、取引は実行したものの、期待したほど事業価値が生み出されないという悩みを聞くことがある。調査結果の統計データを見ても、「統合後の利益拡大効果が期待したほど得られなかった」という回答が多い。これは、取引実行の後の統合作業に失敗するケースが多いからであろう。

 

買い手との経営統合について、取引実行までに時間をとって検討できるケースは少ないため、取引実行後にようやく統合作業を開始するケースがほとんどである。

 

しかし、経営統合を確実に成功させようとするのであれば、取引実行前から統合の事前準備を行うことが望ましい。特に、その統合作業プロセスと経営管理体制は、少なくとも譲渡契約を締結する前から検討を進めておくべきであろう。

経営統合の成功には「4つの問題」の解決が重要

この際、「企業文化や組織風土」といった最上位の概念から、「人事・組織」や「業務プロセス」、「情報システム」まで幅広く捉えることが求められる。

 

①企業文化や組織風土の統合

経営統合の作業として、具体的には、買い手の経営陣、経営企画部門の責任者など、通常は2~3名のメンバーでプロジェクトを構成し、経営統合の目的を明確にする。

 

その上で企業文化や組織風土を融合させる具体的な方法を検討する。これらを検討する場合、ビジネスに対する価値観、人材に対する考え方、顧客への対応方針などの理由によって両社の文化が衝突し、結果として事業価値が失われてしまうことがある。

 

そうした事態を避けるために、早い段階で企業文化や組織風土の違いを認識し、無駄な摩擦を起こさないように、例えば、組織を統合させる前から段階的な人材交流を行い、意見交換を実施しておきたい。

 

②人事・組織統合

経営統合における人事・組織統合においても、「組織は戦略に従う。」といわれるように、買い手の経営戦略に適合する組織を作ることが重要である。

 

人事・組織統合の目的の一つに経営効率化があり、経理部などの間接部門は1つに統合すべきことには疑問の余地はない。しかし、両社の重複するポジションが整理されてしまうと従業員のリストラを強いることとなる。

 

人事・組織統合というのは、従業員のモチベーションという重要な事業価値源泉に影響を与える作業であることから、従業員が納得して受け入れて、引き続き活躍できるような配慮や取組みが必要である。

 

③業務プロセスの統合

最後の課題が業務プロセスの統合である。業務統合がうまくいかないと、従業員個人の日常業務に支障をきたし、事業価値源泉を失うおそれがある。業務統合の検討は、課長や係長など現場に近い管理職を巻き込んで行わなければならない。

 

業務統合の主たる目的は、業務効率化によるコスト削減効果である。統合会社間にて重複している業務で規模の経済が生まれる業務については、その効果が期待しやすい。特に、規模の経済は事業価値を増大させる手段として最もわかりやすいものであるため、確実に実現させたい。

 

ただし、重複業務を減らすために人員削減を伴うリストラや解雇を実施し続けると、従業員のモチベーションを落とし、事業価値源泉を失うことにもなりかねないので、組織統合の作業と同様、会社内部における配置転換などを検討したい。

 

④情報システムの統合

情報システムの統合は、業務統合と密接に関連し、会社を動かす基盤となる領域である。システムが高度なものであればあるほど、その統合にかかる労力とコストは多大なものとなる。情報システムの統合は、基本的に一本化である。異なる情報システム間で機能の比較を行い、高機能なシステムに一本化する。

 

ただし、情報システムの切替えは日常的な業務プロセスの変更を伴うため、従業員にとっては煩わしい作業が生じる。従業員へ丁寧に説明すべきであるが、業務プロセスの変更のために時間的な余裕がない場合は、その切替えのタイミングに注意すべきである。

 

日常業務の混乱を避けるためには、一定期間は両方の情報システムを併用し、移行期間を数年設けた後に統合するという方法も考えられる。

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

一橋大学大学院商学研究科修了(会計学及び経営学修士)。 国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)、公認会計士、税理士、中小企業診断士、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。
中央青山監査法人(PricewaterhouseCoopers)にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門(不動産投資)、SMBC日興証券企業情報本部(中小企業オーナー向け事業承継コンサルティング業務)、みずほ証券グローバル投資銀行部門(M&Aアドバイザリー業務)に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://jigyohikitsugi.com/

著者紹介

連載中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方

 

 

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