悪徳業者に狙われやすい、女性・高齢者
【事例】着物だけを引き取ってもらうはずが……
お客様「こないだ、電話で回収業者の人が、タンスに眠っている着物を引き取ってくれるっていうので来てもらったんだけど、ついでに貴金属も売ってしまったの……」
私「最近、そのような訪問買取の業者が多いですね。ちなみに、ご満足いただける金額でしたか?」
お客様「無理やり買い叩(たた)かれたような気がして……すぐに電話して返してほしいって言ったら、もう無理だって言われました……」
このように、女性や高齢者の方々に対して、立場が弱いといったところにつけこみ、悪徳業者が達者な口ぶりで買い叩いて持っていってしまうのです。
なぜ、このような目に遭ってしまうのでしょうか。悪徳業者は確かに強引です。しかし、もう一つの理由として、遺品をお持ちの方が、「どんなものに価値があるのか」がわからないということもあると思います。
故人がとても大切にされていた価値あるものが、不当な悪徳業者によって、無価値の状態で処分されてしまうのはとても悲しいことです。もし、あなたが今、価値あるモノをお持ちであれば、ご自身のためにも、次世代のためにも、計画的に、遺産や財産整理をしていく、もしくは、価値を伝えていく必要があるかと思います。
私はもともと家業であった質屋を継いだのですが、こうしたトラブルは、我々質屋、古物業界にも風評的な被害がないとはいえません。被害を1つでも防いでいくために貢献したいという思いがあります。
お持ちのお品物を、どこでお売りになるか、処分するのかを選択する権利はお客様にあります。この認識を強く持って、より良い選択をしていただきたいと思っています。
信頼できる遺品買取業者を見分けるポイントは?
では、どんなところに依頼をすれば安心でしょうか?
●モノに対する想いをしっかり聴いてくれる。
●納得のいく説明をしてくれる。
●誠実な対応で、気持ち良いコミュニケーションがとれる。
私が顧客の立場であるならば、こんなところにお願いしたいと考えています。相手の立場で考えながら、最善のご提案、サービスを提供する。これは私の信条でもあります。
質屋を生業にするにあたり、真贋(しんがん)を見分ける力、あらゆるものに対して感覚を養うために、日々、商品知識を蓄え、感性を意識的に磨いていくことは必須です。
そうして身につけた知識や経験を活かして、モノの評価を最大限に行なうことにより、大切なお品物をつなぐ架け橋になれるようにと活動しております。
モノの価値を見極め、できる限りお客様には還元させていただきたい──そのために、まずは適正にしっかり価値に見合った価格を提示するのは当たり前のことですが、加えて、あらゆる販路を持つことや、各ジャンルの専門家とのパイプを持つことも重要です。私はもし、自分がわからない商材に対応するとなったときには、提携しているその分野のプロフェッショナルに同行してもらうこともあります。
しかし残念なことに、すべての業者がそのように対応しているとはいえないようです。曖昧(あいまい)な査定をすれば、信頼を失う可能性も多くあり、ご依頼者に対して詐欺(さぎ)同然となってしまうことにもなりかねません。また、お客様にとって満足のいかない結果となることが見えているのであれば、利益だけを考えて無理やり取引を進めるのではなく、正直にご説明し、断る勇気も必要かと思います。
人の無知をつき、信義に反する行為は最もしてはならないこと。ご依頼いただいたお品物には、それまで刻(きざ)んできた歴史や思い入れがあるかと思います。ご依頼者様に寄り添い、じっくりとお話を聴き、しっかりと想いを受け取ることが大切であり、どんな思いで依頼をしているのかを理解し、使命感と責任をもって、次に必要な方へ引き継ぐ役割を担うこと。これが、私にとって、社会に貢献させていただく一つのカタチであると思っています。
価値を見出し、また新たな価値として社会に循環させることで、再び大切にしてくれる方のもとでモノは生まれ変わり、輝きを取り戻します。そんな橋渡しとしての役割を担えればと思います。