「経営承継」の成功事例…早期に後継者候補を採用したケース③

前回は、経営承継に成功した事例の②として、課題解決に最適な人材を選定するまでの流れを紹介しました。今回は、登用した人材が現場で活躍し、正式な後継者候補となるまでを紹介します。

業務システムの改善・営業スタッフの育成に力を発揮

〈戸波氏のご登用後の活躍〉

ご入社後、戸波氏は高岡社長の許可を得て、営業部全員と面談をした。そこでわかったことは、社内の業務管理ソフトを使えない(パソコンスキルがおぼつかない)社員が何人かおり、いまだに請求書を手で書いて、お客様に持参している人もいた。

 

また、リフォーム事業の女性の営業部員(パート社員)の多くが、携帯でメールは打てるが、パソコンを利用した経験が少なく、業務日報に詳細情報を入力できない人もいた。そのため、帰宅時間が遅くならないよう、適当に入力。あとは口頭で報告していたことがわかった。その結果、お客様情報が十分に共有されず、それがクレームの原因になっていたのである。

 

そこで戸波氏は、再び高岡社長の許可を得て、立山建築の社内システムを専属で開発している石川産業に、業務システムの仕様を次のように変更することを依頼し、情報管理の徹底を図ることにした。

 

●業務システムの簡易化→なるべくボタン一つで請求書が発行できる→請求書の一括管理

●携帯で外部からも日報が書けるようにする→女性パート営業が移動時間でも簡単に入力ができる

 

そして、営業スタッフに対しては次のような方針で臨み、丁寧に育成した。

 

●都度都度、同行訪問をし、現場トレーニングをしていく

●社内教育研修制度を開始(当初は任意参加で実施)

●業務日報に関しては、部下のコメントに丁寧に対応し、その日のうちに返信する

経験を積み、正式な後継者として「取締役副社長」へ

ところで、こうした改革の一番の成果は、意外な事実が表出したことだった。立山建築のある営業担当者が、クライアント企業の担当者と一緒になって横領していたことが判明したのである。また、今回、業務システムの仕様変更を依頼してみて、石川産業からの請求額が、不当に高いものであることも明るみに出た。高岡社長が、あまりIT関係に詳しくないことにつけ入ったもので、立山建築側はそうとも知らず、その高い額を過去に何度も支払っていたのであった。

 

さて、戸波氏が入社して3年が経ち、当初多発していたクレームは、ほぼ「ゼロ」になった。利益も10%増。戸波氏は、営業部長から昇格して、現在は取締役副社長に就任。営業だけでなく全社の経営を見るようになった。

 

高岡社長は70歳になり、現在、戸波氏を正式な後継者として考えており、現場の判断をゆだねるとともに、戸波氏に株を譲渡する準備も始めた。

株式会社経営承継 代表取締役

会計コンサルタント、IT戦略コンサルタントを経て、大手人材紹介会社に転職。エグゼクティブクラスの採用を担当し、のちに流通・小売専門の人材紹介会社においてエグゼクティブ部門の立ち上げに参画。年間400名の転職希望者との面談を実施した。その後、日本で始めて中小企業の事業承継に関わる後継者紹介サービスを始める。

著者紹介

汐留司法書士事務所 代表 司法書士

26歳で司法書士試験に合格したのち、登記、相続、裁判、それぞれを得意とする複数の事務所に勤務。独立後は士業の専門家集団である汐留パートナーズグループに参画し、ネットワークを強みに、相続に関するコンサルティングに力を入れる。

著者紹介

一般社団法人さいたま幸せ相談センター 代表理事 不動産鑑定士

不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、主に外資系金融機関に対するバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価等、年間100件以上の案件を手がける。キャリアを積んだのち、遺言書の作成に向けた個人の不動産鑑定に携わったことでやりがいを感じ、相続案件をメインに手がけるようになる。

著者紹介

税理士

24歳で税理士試験に合格し、27歳で税理士登録。実務経験に加え、専門学校の税理士講座で教鞭を執るほか、生命保険の営業も経験。相続税を究めた税理士として、顧客のニーズに沿った親身なオーダーメイドの相続対策を提案。年間150件以上の相続案件に携わる。

著者紹介

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター 代表理事

大学卒業後、不動産売買仲介大手の東急リバブルへ入社。5年間不動産売買仲介業を経験し、その後は都内初の廃校再生事業を含む不動産再生ビジネス事業や、数百億円規模の不動産ファンドの運用、相続コンサルティングを行なう。営業・管理・マーケティング・運用・相続と、不動産に関わる多彩な部門に精通、過去18年間で1000件を超える不動産・相続案件に携わり、不動産・相続を手がける複数の企業や団体で要職を務める。

著者紹介

遺品査定士

ブランド品や宝石、アンティークを中心に、年間10万点を超える査定をこなし、培った真贋力を、生前整理・遺品買取に活かす。“丁寧で根拠のある価格説明”をモットーに、思い入れのある大切な“お品物”の橋渡し役として、常にお客様の目線でサービスを提供している。

著者紹介

連載円満相続の実現…事例に学ぶ「大切な資産」の守り方

 

円満相続をかなえる本

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石川 宗徳,森田 努,島根 猛,佐藤 良久,近藤 俊之,幾島 光子

幻冬舎メディアコンサルティング

「対策が難しい相続」に悩む人に向けてプロフェッショナルが事例とともに分かりやすく解説。大切な資産と人間関係の守り方教えます! 「相続登記と遺言を行なうメリットってなんだろう?」「相続した不動産、売るべき?売ら…

 

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