今回は、同業者へ親族外事業承継を行うメリット・デメリットを見ていきます。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

同業者への承継は「更なる成長」を実現できる

オーナー経営者は、親族外承継(M&A)した後でも、自社の事業が存続、成長してもらいたいと考える。自社と経営統合して更なる価値を生み出すことができる買い手候補とは、どのような会社であろうか。

 

一般的に、買収によって更なる成長を実現できる会社は同業者である。同業者は、統合した際に収益面やコスト面においてシナジー効果(=相乗効果)を発揮させることができるため、統合後に事業価値を生み出すことができる。シナジー効果の発現が、買収対象事業の更なる成長をもたらすのである。

 

同業者との統合は、水平統合であるため「規模の経済」を実現できる。「規模の経済」とは、生産量の増大につれて平均費用が減少し、利益率が高まる効果をいう。これは、垂直統合(たとえば、卸売業者と小売業者の統合)と比べて、創出できるシナジー効果が大きい。

 

身近な例であれば、大手家電量販店の経営統合が有名であろう。これは仕入先の家電メーカーに対する交渉力を高める効果を目的としている。購買ロットの大口化による仕入単価の引下げや、管理部門の合理化による経費削減などが可能となるため、利益率を上げることができる。

ライバル企業への「情報流出」には細心の注意を

しかし、同業者へ買収提案を行えば、売却を検討している事実をライバル企業に知られてしまうことなる。

 

また、条件交渉の際には、決算書などの重要な機密情報がライバルに流出することになる。それゆえ、取引が成立しなかった場合、自社の機密情報が同業者に活用されてしまうことになり、競争上の立場が不利になるおそれがある。

 

このため、同業者に対する情報開示は、情報を少しずつ段階的に開示する、最重要情報は最後に回すなど、慎重に進めていく必要がある。

 

売却価格の最大化を実現できる買い手という意味でも、同業者が適している。同業者が生み出すシナジー効果の大きさは、営業地域と取扱商品によって整理すると、以下のようになる。

 

[図表1]

 

[図表2]シナジー効果を生み出す買い手

 

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