前回は、天空率に着目し、「斜線制限」の適用を回避する方法を説明しました。今回は、「リノベーション」の重要性について見ていきます。

古い建物は「利用価値」を維持・向上させる必要がある

建築は不動産という資産の価値を高めることのできる専門分野です。それは何も、土地だけに限りません。建物にも通じることです。

 

建物は収益を生む源泉です。住宅、オフィス、店舗・・・と、具体的な利用価値を持ちますから、そこを利用したいと考える入居者が対価を支払って借ります。その対価が収益になるわけです。

 

その収益はいつまでも変わりないかというと、そうでもありません。利用価値が上がれば収益も上がりますし、逆に利用価値が下がれば収益も下がります。その空間の利用価値次第と言っていいでしょう。

 

しかし、利用価値は放っておくと下がっていきます。建物の躯体と呼ばれる構造体は頑丈なままでも、設備は古くなっていきます。とりわけ浴室や洗面所など水回りの設備は毎日使うもので、快適性にも大きく影響します。それだけに最新のものは、さすがに使い心地もいいものですから、旧式のものにはどうしても不満を感じがちです。

 

しかも周辺には、同じ顧客を狙う競合建物がどんどん新しく登場してきます。賃貸住宅であれば、顧客である入居者の目はどうしても新しいものに向いてしまいます。それでも選んでもらうには、利用価値を維持・向上させることが欠かせません。

「リノベーション」では思い切った間取り変更も実施

内装や設備を新しいものに入れ替えるというのは、賃貸住宅でもよく取られる利用価値の維持・向上手段です。住戸内だけ見れば、新築と見違えそうです。立地や家賃との兼ね合いもありますが、新築とも十分に競合できるものもあるでしょう。

 

しかし中には、もっと本格的に手を加えないと利用価値を維持・向上できないほど古くなってしまった例もあります。その場合には、建て替えも視野に入ってくるでしょうが、投資額もかさみますし、何より建物の解体・建設期間は収益ゼロに陥ります。投資額は抑え気味に、しかも賃貸経営を中断することなく、利用価値の維持・向上を図ることができれば、一番です。

 

リノベーションはそのような場合に実施される、建物の改修の方法です。内装や設備を新しいものに入れ替えるだけでなく、例えば賃貸住宅では、ターゲットとコンセプトを明確にし、思い切った間取り変更も実施します。
 

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

変形地の価値を高める マンションづくり

変形地の価値を高める マンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地…。 活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために必…

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