コンクリートの品質を決める3本柱とは?
リノベーションに取り組む前提として、建物の構造体である躯体がしっかりしていることを確認しておく必要があります。コンクリートの耐久性に問題はないか、耐震性は十分に確保されているか、という点です。
コンクリートは多くの人が丈夫な材料と思っていることでしょう。木のように腐らないし、鉄のようにさびないので、耐久性にも優れると見られているのではないでしょうか。しかし、品質管理が十分でないと、強度や耐久性に問題が生じます。
災害時に緊急輸送道路として利用される幹線道路に面していた築30年以上の賃貸マンションを調査したときのことです。1階から3階までのコンクリートは手抜き工事の産物で、コンクリートの強度が通常の3分の1から2分の1程度しかありません。配合の段階で恐らく、水を大量に混ぜたのではないかと考えられます。強度が不足しているので耐震補強は難しいと判断し、建て替えの方向を模索することになりました。
コンクリートには、その品質の良し悪しを決める、3本柱と呼ばれる3つのポイントがあります。配合、打設、養生の3つです。
そもそもコンクリートとは、どのようなものでしょうか。通常、セメントと骨材と呼ばれる砂利と砂と水などを混ぜ合わせてつくります。ここで、水が多かったり、骨材に質の良くないものが使われていたりすると、強度の低下を招きます。きちんと配合されたコンクリートを、丁寧に打ち込み、望ましい環境の下で十分に養生させることが求められます。
そうした品質管理は十分だったのかを、リノベーションの段階でしっかり検証しておく必要があるのです。
商業建物の空中階はテナント確保に苦労するが・・・
東京・巣鴨に1982年に完成した地上5階建ての賃貸建物では、調べてみるとコンクリートがまだまだ持ちそうであることが分かりました。そこで、空いていた4、5階のリノベーションを実施しました。ワンフロアの床面積は15坪ほど。それまで借地権を所有していた2階の中華料理屋が、離れの客間として利用していたスペースです。
通常、商業建物の4、5階という空中階はテナント確保に苦戦しがちです。この建物の場合も、テナント募集の長期化が予想されたことから、筆者の会社にリノベーションの相談を依頼してこられました。JR巣鴨駅から歩いて2分と立地条件には恵まれています。その優位さを生かせないことに、建物のオーナーは危機感を持ったようです。
2フロアとも、いったんスケルトンと呼ばれる躯体だけの状態に戻し、そこから設計を開始しました。4階は特注のアイランド型キッチンをすえた住戸につくり替えました。引き戸を挟んで、リビングや寝室を配置しました。5階はまるまる一部屋のスタジオタイプの住戸です。可動式の家具で内部を仕切ります。
リノベーションを実施するに当たっては、筆者が代表を兼務する不動産管理会社で躯体をまず一括で賃借し、そのうえで躯体内部に住戸を整えました。
投資額は各フロア600万円。入居者が決まれば6年程度で投資回収できる計算です。建物のオーナーとの間の賃貸借期間は12年間で、6年目以降12年目までにオーナーの意向で契約を解除する場合には、造作費用の一部を年々減額させる方式で支払ってもらう取り決めです。12年目以降は対価なしにそのままでオーナーにお返しする約束です。
建物のオーナーにとっては、事業リスクを抑えることのできるやり方です。競争の激しい賃貸市場との間に不動産管理会社であるグループ会社の六耀をはさむことで、市況の影響を受けず、安定した収益を得ることができます。このワンクッションが、安心につながっています。
私たちにとっては、どのようなリノベーションをすれば、どのような反応が返ってくるか、賃貸市場の状況をつかむことができます。今後はリノベーションを通じシェアハウスのような賃貸の供給にも乗り出していきたいと考えているだけに、こうした挑戦は私たちにとっても意義深いのです。