今回は、「養子の子」を養子にする場合を見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

「養子縁組前に出生したかどうか」がポイントに

前回の続きです。

 

⑤養子の子を養子にする場合

 

すでに述べたように、養子縁組後に出生した養子の子は、養親の嫡出子の子になるため、養親との間に親族関係が発生します。したがって、養子が養親より早く死亡し、その後、養親が死亡した場合は、養親の財産を代襲相続することができます。反面、養子縁組前から出生していた養子の子は、養子縁組によっても養親との間に親族関係が発生することはありません。したがって、養子が養親より先に死亡し、その後、養親が死亡した場合でも、養親の財産を代襲相続することはありません。

 

[図表1]

 

このように、養子縁組前に出生した子かどうかで、親の財産の相続権に大きな違いが出てしまいます(なお、親が亡くなって次に養子が亡くなったという場合は、親が亡くなった時点で、親の財産は養子が相続し、次に養子が亡くなった後は、その財産は、養子縁組の前に生まれたか後に生まれたかにかかわらず、2人の子が平等に相続しますから不平等は発生しません)。

 

養子縁組前に生まれたかどうかにかかわらず、2人の子は兄弟なのですから、この2人の間に大きな差がつくのは好ましくないでしょう。大きな差がつくと、2人の兄弟の関係が悪くなることが考えられます。

 

このような場合、親と養子縁組前に生まれた子との間で養子縁組をするのもひとつの方法です。ただ、親と養子の子の場合ですから、養子縁組というよりも、親が遺言を書いて、ある程度の財産を養子縁組前に生まれた子に渡し、養子縁組後に生まれた子に比べて大きな違いがないようにしておくのがよいかもしれません。もちろんこれも、先に、第7回の④で述べたように、遺言を書くかどうかは、親と養子縁組前の子との関係にもよることです。

 

 

■親と養子縁組前に生まれた子が養子縁組をする、あるいは遺言を書いておくのもひとつの方法

親族の子と養子縁組をして、家を継がせるケースも

⑥甥・姪、知人、従業員を養子にする場合

 

ア)家を継がせる場合など

資産家、農家などの場合、跡継ぎになる子がいないときに、家を存続させるため、また、自分の面倒を見てもらうために、甥・姪などの親族の子を養子とすることがあります。養子となった者は、資産家、農家などの稼業に従事し、家の存続と発展をはかり、また、養親を扶養して、養親死亡後は養親の家の財産を相続します(養子となることにより、扶養義務と相続権が発生します)。

 

この場合は、養子に養親の家の跡継ぎとしての自覚を持ってもらい、養親の姓を継いでもらうために養子縁組をすることが必要であり、養親の財産を贈与したり、遺言を書くという方法を取ることはありません。

 

[図表2]

 

ちなみに、このような家を継がせるというような意図がない場合でも、甥・姪が、叔父・叔母に子がいないために、叔父・叔母の面倒を見ているという場合には、状況によっては養子縁組をすることがあります。というのも、叔父・叔母の相続人は、第一には叔父・叔母の配偶者と子、配偶者と子がいない場合は叔父・叔母の親、親がいない場合は叔父・叔母の兄弟となり、いくら面倒を見ても、甥・姪には叔父・叔母の相続権はないからです。

 

養子縁組をすることによって、甥・姪には叔父・叔母を扶養する義務が発生し、また、叔父・叔母の財産を相続する相続権が発生します。ただ、養子縁組をすると、その後、何かの都合で、甥・姪が叔父・叔母の面倒を見てくれなくなっても、簡単に養子縁組を解消することはできません。

 

そこで、このように甥・姪が面倒を見てくれるからそれに報いたいという場合は、養子縁組までしなくても、毎年お金などの何かの財産を贈与するということも考えられるでしょう。また、面倒を見てくれる甥・姪のために遺言を書いておくということも考えられます。

 

ただ、遺言の場合は、いつでも書き換えることができ、書き換えた場合は、後に書いた遺言が優先します。叔父・叔母が他の親族から圧力を受けて遺言を書き換えるということも考えられるので、遺言というのは不安定な面があります。

 

なお、叔父・叔母が亡くなった時点で、ある財産を甥・姪に贈与するという死因贈与契約もよい方法ですが、あまり知られている方法ではありませんし、死因贈与契約も撤回される可能性があります。

 

どの方法を取るかは、その時の状況、甥・姪の人柄にもよると思いますので慎重に考える必要があります。

 

 

■甥・姪が面倒を見てくれるので報いたい⇒養子縁組、贈与、遺言、死因贈与

 

イ)企業を継がせる場合(事業承継)

書籍『相続に活かす養子縁組』第2章三[2](1)を参照してください。

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

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