連れ子に「実子と同じ権利・義務」を持たせる養子縁組
前回の続きです。
③配偶者の連れ子を養子にする場合
[図表1]
すでに子がいる女性(あるいは男性)と結婚する場合、結婚後、その子が当然に養子となるわけではありません。男性が、すでに子がいる女性と結婚する場合を例に挙げると、夫である男性と、妻の連れ子とは、結婚後も親族関係はなく、法律上は他人ということになります。子がすでに大きくなっており、夫婦と共同生活をする必要がないというのであれば、それほど問題はないのかもしれませんが、子がまだ小さく、今後もずっと夫婦といっしょに生活していくという場合には、親子同然に育てるわけですから、親子の感情が芽生えることが多いと思います。
特に、その後、夫婦の間に子が生まれた場合、新しく生まれた子は、
●父(夫である男性)の親権に服する
●父を扶養する義務がある
●父を相続する権利がある
のに対し、妻の連れ子は、
●夫である男性の親権に服しない
●夫である男性を扶養する義務がない
●夫である男性を相続する権利がない
ということになり、両方の子は、夫婦といっしょに親子として育ってきたにもかかわらず、法律上はまったく違う扱いがされることになります。
[図表2]
これでは、妻の連れ子は疎外感を持ってしまい、それまで夫婦、その間の子と良好な関係を持っていたとしても、このことを知ったとたんに、関係も悪くなってしまうのではないでしょうか。
特に、妻の連れ子がまだ物心がつかないうちに結婚したという場合は、その子は夫である男性を血のつながった父と思っていますから、後になって、実の父と思っていた人とは血のつながりがなく、扶養義務も相続権もないと知ったときは、ショックが大きいと思われます。
したがって、このような場合は、夫である男性と妻の連れ子との間で養子縁組をし、実の子と、親権、扶養、相続について、同じ権利・義務を持つようにしておくことが望ましいのではないでしょうか。
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■養子縁組をして、同じ権利・義務を持つようにしておくことが望ましい。
ただ、問題点をあえて挙げると、妻の連れ子の素行がよくないというような場合でも、いったん養子縁組をしてしまうと、離縁の合意ができない限り、離縁をすることは容易ではありません。また、夫が妻と離婚した場合でも、夫と妻の連れ子との養親子関係は残ります。これらの点も考慮に入れて、養子縁組をするかどうかを決めるとよいと思われます。
子の配偶者の連れ子と養子縁組をすると・・・
④子の配偶者の連れ子を養子にする場合
[図表3]
たとえば、親に息子がおり、その息子がすでに子がいる女性と結婚する場合です(親に娘がいて、その娘がすでに子がいる男性と結婚する場合ももちろん同じです)。
結婚後に生まれた子は、もちろん親からすると孫ですから、扶養義務もありますし、(子を介してですが)相続権もあります。しかし、この例でいうと、女性の連れ子は親と親族関係にありませんから、扶養義務もありませんし、相続権もありません。
このような場合、特に、息子が親より先に亡くなってしまった場合に問題が起こってきます。息子が亡くなっても、息子(夫)と女性(妻)との間に生まれた子は親の親族ですから、親が亡くなったときに代襲相続人となって親の財産を相続することができます。しかし、女性(妻)の連れ子は、親の親族ではありませんから、親を代襲相続することができません。
[図表4]
女性(妻)の連れ子と結婚後に生まれた子が、小さい頃からいっしょに育てられたような場合は、女性(妻)の連れ子と結婚後に生まれた子の間に大きな差がつくのは好ましくないでしょう。大きな差がつくと、2人の子の関係が悪くなることが考えられます。
このような場合、親と女性(妻)の連れ子が養子縁組をするのもひとつの方法です。ただ、親と息子の妻の連れ子の場合ですから、養子縁組というよりも、親が遺言を書いて、ある程度の財産を息子の妻の連れ子に渡し、息子とその妻との間の子に比べて大きな違いがないようにしておくのが穏当かもしれません。もちろんこれも、遺言を書くかどうかは、親と息子の妻の連れ子との関係にもよることではあります。
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■親と連れ子が養子縁組をする、あるいは遺言を書いておくのもひとつの方法