今回は、養子縁組の効力を争うにあたり、「法的手続き」を取る際の問題点を見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

養子縁組無効の主張に期限はなく、解消後の訴訟も可能

前述の(1)~(4)【本連載第14回第16回参照】などの場合、養子縁組の効力を争うには、簡易裁判所で行う調停という手段もありますが、調停はあくまで話し合いの手続きですので、訴訟で争うことになります。

 

以下、法的な手続きを取る場合の問題点について挙げてみます。

 

養子縁組無効の主張をする場合、必ずしも訴えの提起を取る必要はありません。相手方からの裁判を起こされた場合、訴えに対する抗弁として主張することもできます(大審院昭和15年12月6日判決)。

 

縁組解消後でも、確認の利益がある限り、縁組無効の訴えを提起することができます(大審院昭和13年10月29日判決)。

 

養子縁組無効の訴えを提起するについて、期間制限はありません(最高裁昭和31年10月4日判決)。

 

養子縁組の当事者とされている養親および養子が、縁組無効の訴えの当事者になります。

推定相続人も「養子縁組の無効」を主張できる

第三者は養子縁組無効の訴えを提起できるかについては、訴えの利益ある限り、提起することができます。最高裁昭和63年3月1日判決は、「養子縁組無効の訴えは、養子縁組の届出に係る身分関係を対世的に確認することを目的とするものであることから、養子縁組無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより、自己の身分上の利益に関する地位に直接影響を受けることのない者は右訴えにつき法律上の利益を有しないと解するのが相当である」としています。

 

つまり、本件最高裁判決は、「身分関係」への影響を問題とし、養子縁組の無効により、自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者は、その権利義務に関する限りでの個別的、相対的解決に利害関係を有するものとして、この権利義務に関する限りで縁組の無効を主張すれば足り、それを超えて他人間の身分関係の存否を対世的に確認することに利害関係を有するものでないからであるとしています。

 

推定相続人は、被相続人の養子縁組の無効を主張できるかについて、上記の最高裁判決は、「養子縁組が無効であることにより、自己の身分上の利益に関する地位に直接影響を受けることのない者は右訴えにつき法律上の利益を有しない」としていますが、推定相続人は、養子縁組が無効であることにより、推定相続人自身の身分上の利益に関する地位に直接影響を受けるものとして、訴えを起こすことができるとされています。

 

 

■養子縁組の効力の争い

 

●訴えを起こしても、抗弁で主張してもよい。

●縁組解消後でも訴訟ができる。

●期間制限はない。

●養親と養子が当事者。

●第三者も養子縁組無効の訴えを起こすことができるが、自己の身分上の利益に関する地位に直接影響を受けることのない者(財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者)は、訴えを起こすことはできない。

●推定相続人も、養子縁組無効の訴えを起こすことができる。

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

養子縁組にまつわる法的問題と、制度活用時のポイントを解説。 平成29年1月31日、最高裁は、節税を目的とする養子縁組の有効性を認めた。 本書は、この判決を契機として、養子縁組をする際の法律上の制約、養子縁組の意思…

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