養子縁組について実子と話し合い、円満な関係を築く
前述のとおり、養子縁組による相続人の増加によって、相続による遺産分割が、「争族」になる可能性があります。そこで、養子縁組をするときには、将来の争族をできるだけ回避することを考えておくことが必要となります。
(1)実子(推定相続人)、養子を交えて、よく話し合いをする
将来の相続紛争を回避するためには、養子縁組したことを他の実子(推定相続人)に隠しておくべきではありません。
相続発生後、養子と称する戸籍上の人物が現れた場合に、実子がこの事実を速やかに受け入れることは困難でしょう。
実子に対しては、養子縁組をした理由、自分の気持ちを話し、今後、養子と親族関係をうまくやっていってほしいということを伝えます。養子に対しては、他の実子その他の親族関係を円満に行っていくよう伝えます。実子との関係にもよるでしょうが、場合によっては、養子縁組をする前に、実子とよく話し合いをすることもよいでしょう。
↓
■争族を回避するため、養子縁組したことを実子に隠すべきではない
終わりのない争いを防ぐには「遺言書」が有効
(2)遺言書を作成しておく
養子縁組によって争族となる可能性がありますが、その対策として遺言書を作成しておくとよいと思われます。
遺言書を作成する目的のひとつは、被相続人の遺産をめぐる相続人同士の争いをできるだけ防止することです。
たとえば、一般的に遺産をめぐる争いには、次のようなものがあります。
●相続人の一部の者が、「自分は被相続人の遺産を増加させたり、守ったりしたから、他の相続人より取り分が多いはずだ」と主張して話し合いがつかない(このような主張を「寄与分の主張」といいます)
●相続人の一部の者が、「あの相続人(自分以外の相続人)は、被相続人の生前、被相続人からお金や土地をもらっているから、取り分は少ないはずだ」と主張して話し合いがつかない(このような主張を「特別受益の主張」といいます)
●被相続人の土地・建物、預貯金などの遺産につき、誰が何をもらうかの話し合いがつかない
養子縁組をした趣旨、寄与分、特別の寄与、誰に何を残すかということをよく考えた遺言書があれば、このような争いを防ぐことが可能です。
たとえば、事業承継のための養子縁組をするのであれば、事業に必要な資産は養子が相続し、それ以外の資産は実子が相続する、よく世話をしてくれた息子の嫁の場合は、その世話に見合う財産を与える、子のない相続人が養子をする場合は、相続人の兄弟(養子からすれば叔父・叔母)に対し、養子縁組をする趣旨、今後、養子を盛り立ててほしいという気持ちを遺言書に書いておく、場合によっては、遺言によって、叔父・叔母にも多少の財産を与えるということも考えられます。
↓
■争族を回避するため、遺言書を作成する