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養子縁組の届出・・・トラブルを防ぐための手続き上のポイント

今回は、養子縁組の届出をする際、トラブルを防ぐための手続き上のポイントを見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

養子縁組届には「養親・養子」の署名押印が必要

すでに述べたように、養子縁組の無効が訴訟などで問題になる場合、多くは下記の点が問題になります。

 

役所に提出された養子縁組届は、偽造されたものである

 

母が養子縁組をした当時、母には養子縁組をする能力(意思能力)はなかった

 

母が養子縁組をした当時、母に意思能力があったとしても、養子縁組は特定の相続人の遺留分を減らす目的でされたもので、母には養子縁組をする意思(真に親子関係を形成しようとする意思)がなかった

 

役所が養子縁組届を受理するときに、❶❷❸の点を完璧に審査できればよいのでしょうが、そんなことは現実には不可能ですし、また効率的でもありません。したがって、上記のような問題が起こることはやむを得ないともいえるのですが、養子縁組届が出された場合の役所の取扱いについて、このような問題点と関係あるポイントについてだけ触れることとします。

 

(1)署名

 

養子縁組届には、養親、養子の署名押印が必要ですが、署名は、法的には養親、養子本人がする必要はなく、第三者が代書することが認められています(戸籍法施行規則62条1項)。ただし、前述したように、本人が署名するのが通常ですし、訴訟になれば、署名を偽造したとされた者は、本人が書いたものだと主張するのが通常で、訴訟では、筆跡鑑定は有効な手段です。

 

(2)押印

 

実印を押印する必要はなく、認印で済ませることができます。認印であっても、本人の了解なく押印すれば、文書偽造罪が成立するので(刑法159条等)、これで正確性を担保しようとしているのだと思われますが、偽造しようとすれば簡単に偽造できてしまいます。

 

(3)証人

 

養子縁組届を提出するには、成年2人以上の証人が必要ですが、偽装者が証人2名の署名を勝手に行い、また、認印を押してしまえば、証人がいるとの外観を作ることは可能です。

 

(4)本人確認

 

すでに述べたとおり、養子縁組届を提出する場合、役所の窓口で本人確認をすることになっており、本人であることを確認するために、運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなどを提出しなければなりません。これらを持参しなかった場合でも受理はされますが、本人確認できなかった届出人の住所地に届出受理の通知が発送されます。

 

したがって、養子縁組届を偽造することは難しいのですが、養親が認知症になっている、養子縁組届を偽造した人が養親と同居しており、自宅に来た通知を隠してしまったなどという場合は、養子縁組が当事者の知らない間に勝手にされてしまうことがあり得ます。

不受理申出の有効期間が「無期限」に

(5)役所の審査権

 

ⓐ養親子間に縁組意思があるかどうかなど、実質的要件のすべてが審査対象になるか

 

ⓑ養子縁組届、添付書類、戸籍謄本など、戸籍関係法令上、同然に予定されている書類以外の資料を基礎に審査することができるか

 

上記については争いがあり、ⓐ、ⓑとも消極に考える見解と、ⓐ、ⓑとも積極に考える見解があります。ただ、いずれの見解も、権限があるのか、それともないのかという点についての見解の違いであり、義務があるかどうかということではありませんから、役所に多く期待すべきでないことはもちろんです。

 

なお、ⓐに関しては、「戸籍事務管掌者たる区長の権限は、届書における記載事項の具備、法令に要求された証明書の添付など形式的要件の審査をなし得るにとどまらず、ある程度の実質的要件の存否の審査もこれをなし得るのであり、ことに、届出事項が虚偽であること、または実体法規に牴触したためにその効力を生じないことが明らかな場合には、戸籍の記載を拒否することができる」とした判例があります(名古屋高裁昭和49年7月3日判決)。

 

(6)不受理の申出

 

誰でも、その本籍地の市区町村長に対し、自分を本人とする養子縁組届が出された場合であっても、養子縁組届を受理しないように申し出ることができます(戸籍法27条の2第3項)。

 

不受理申出の有効期間は以前は最長6か月でしたが、平成20年5月1日以降の申出の場合は期間の制限が撤廃され、申出の取下げがされるまで無期限で有効となりました。

 

不受理申出の場合でも、申出を取り下げる場合でも、届出人本人が自ら市町村役場に行くことが必要です(戸籍法施行規則53条の4第1項、6項)。

 

 

■養子縁組届の手続き

 

●署名は養親、養子本人がしなくてもよい

●押印は認印でもよい・成年2人以上の証人が必要

●届出人の本人確認のために、運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなどが必要。これらを持参しなかった場合、本人確認できなかった届出人の住所地に届出受理の通知が発送される

●養子縁組の実質的要件のすべてが審査対象になるか、戸籍関係法令上予定されている書類以外の資料を基礎に審査することができるかについては争いがあるが、権限があるのかないのかという点についての見解の違いあり、義務があるのかどうかということではないので、役所に多く期待すべきではない

●本籍地の市区町村長に対し、自分を本人とする養子縁組届が出された場合に、養子縁組届を受理しないように申し出ることができる

グリーンリーフ法律事務所 弁護士

昭和55年 早稲田大学法学部卒
昭和59年 弁護士登録
著書に「決定版原状回復 その考え方とトラブル対処法」(にじゅういち出版)、「誰にもわかる借地借家の手引」(新日本法規出版、共著)など。論文に「相続税の負担減少を目的とした養子縁組の効力とその対応策」(月刊税理)、「相続が発生した場合の預貯金の取扱い」(月刊不動産フォーラム21)など。

著者紹介

グリーンリーフ法律事務所 弁護士

昭和60年 法政大学法学部卒
平成12年 弁護士登録
論文に「特定の相続人による死亡保険金の受取りと特別受益をめぐる問題」など。講演に「更新料・家賃督促など賃貸経営に関連する判例の動向」「<賢い資産活用法>~老朽化、退去、建て替え編」など。

著者紹介

グリーンリーフ法律事務所 弁護士

平成14年 早稲田大学第一文学部卒
平成20年 弁護士登録
埼玉弁護士会示談あっせんセンター運営委員会委員。講演に「実際の裁判例から学ぶ、職場におけるハラスメント対策」「個人情報保護について」「自動車注文書裏面約款の法的解説」など。

著者紹介

グリーンリーフ法律事務所 弁護士

平成23年 中央大学法学部卒
平成25年 首都大学東京法科大学院卒
平成26年 弁護士会登録
埼玉弁護士会弁護士業務妨害対策委員会委員。講演に「消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法の改正」「民法(債権法)改正」など。

著者紹介

連載相続税対策としての「養子縁組」・・・その活用方法とポイント

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

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