今回は、ドライアイが「ものの見え方」に及ぼす影響を取り上げます。※本連載は、医療コミュニケーションの研究とともに、患者さんへ病気の知識をわかりやすく伝える活動を続けている眼科専門医・平松類氏の著書『本当は怖いドライアイ』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、ドライアイの基礎知識と対処法をご紹介します。

ドライアイの治療で「実用的な視力」が上がる!?

前回の続きです。

 

これまでよりも楽しく本も新聞も読むことができます。これまで読むことができなかった新聞の小さい記事まで読めるようになります。実際にドライアイがよくなった多くの方が、本や新聞が楽しく読めるようになったと言います。あなたも長くドライアイが原因で見にくくなっている、ということにさえ気づいていないかもしれません。

 

ドライアイを治してよくなるのは、いわゆる0.5とか1.2といった「視力」とはちょっと違います。白内障の治療をしてよくなる、メガネをかけるとよくなるというのとはちょっと違うのです。「実用的な視力」が上がるといいます。

 

つまりドライアイがよくなることで「疲れてもしっかり見える」のです。ただ眼科ではそうした「実用的な視力」が下がってもなかなか取り扱ってくれるところは少ないです。なぜなら眼科では「視力」の数値をもとにお話をしている医師が多いからです。

 

例えばこんな会話があります。

 

あなた「最近視力が落ちちゃって困ってるんです」

医者 「でもあなた、今日の視力検査で1.2出ていますので問題ないですよ」

あなた「先生、でも本当に以前と比べて見にくいんです」

医者 「でも検査は正常値です。メガネが合っていないんじゃないですか?」

あなた「メガネは先月新しくしたばかりです」

医者 「視力を1.2以上は無理ですよ。年齢の変化でしょう。様子を見ましょう」

あなた「……」

 

こんな会話をしたことがあるのではないでしょうか?

治療によって、趣味の「数独」が再開できた80代男性

80代の男性の方は数独が趣味でした。数字のパズルのようなものです。クロスワードパズルなども好きでした。しかし、見にくくなって趣味の数独ができなくなってしまいました。テレビも長い時間見ていられなくなりましたが、医者にいっても「あなたの視力はわるくない」と、特に問題ないと言われてしまったのです。家族も「視力がいいのに気のせいでしょう」と取り扱ってくれません。

 

そんな中、ドライアイを治すことにしました。するとすっかり見やすくなって趣味の数独ができるようになりました。「こんなにできるようになりました」といって見せてくれましたが、私が見ても、「よくこれを見て解こうと思うな」と思うような細かいものです。本人は楽しそうに今も取り組んでいます。

 

実際に視力検査の数値は変わらないけれども本人は見やすくなっているのです。目の表面の傷がなくなると光が散乱しにくくなるのでまぶしさが改善するという人も多いです。あなたにもぜひそのことを実感してもらいたいのです。見やすくなるだけではなく、目のゴロゴロ・乾き・痛みもとれてきます。

本当は怖いドライアイ

本当は怖いドライアイ

平松 類

時事通信出版局

医師も軽く考えがちなドライアイ。 目薬で一時的によくなっても、根本は治っていません。 でも、安心してください。 いい対処法があるのです。この本に出会ったことが、苦しみと決別するチャンスです。 目が乾燥することによ…

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