今回は、ドライアイの症状が「涙の質」に影響を受ける理由を取り上げます。※本連載は、医療コミュニケーションの研究とともに、患者さんへ病気の知識をわかりやすく伝える活動を続けている眼科専門医・平松類氏の著書『本当は怖いドライアイ』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、ドライアイの基礎知識と対処法をご紹介します。

涙には「水の層」と「油の層」がある

前回の続きです。

 

涙の「質」がわるいというのはどういうことでしょうか? よくよく調べてみると、涙というのは実は単なる水ではないことがわかってきました。涙には水の層と油の層があることがわかっています。

 

[図表1]涙の層

 

質のいい涙は水の表面に油の層がきれいに張っています。肌に保湿のクリームを塗っているようなものです。そのため簡単には乾きません。この油はまぶたにある油の腺(マイボーム腺)から出てきますが、血流がよくないと油として溶け出てきません。血流をよくして油を分泌させることできれいな油の層をつくる必要があるのです。

 

[図表2]マイボーム腺

 

また、水の層も単なるさらさらの水ではありません。質のいい涙は水の成分もさらさらとしていなくてとろみがあります。とろみをつけるのが「ムチン」という成分であるということも最近わかってきています。最新の目薬にはムチンを足した成分のものもあります。

 

水をこぼしたときとゼリーをこぼしたときではどちらが乾きやすいかというと、答えはお水です。ゼリーのような水の層をつくる必要があるのです。つまり油の層をちゃんとつくり、水にとろみをつけてあげるようにすると、ドライアイは治るのです。

 

この話はごく最近わかってきたことです。そのため、もしかしたらあなたの主治医はこのことを知らないかもしれません。あなたが知っているドライアイの対処法は、新しい事実を知らないままに誰かが言っている対処法かもしれません。残念ながら間違った対処をしていると、ドライアイはどんどんひどくなっていってしまいます。

いくら目薬をさしても、ドライアイはよくならない!?

ある30代の女性はドライアイがひどいといってひっきりなしに目薬をさしていました。けれどもさっぱりよくなりません。乾いて目が疲れてしまい仕事も手につきません。イライラして見にくいのです。けれども「目が乾くから目薬を」と、どんどん目薬をさしていたのです。一向によくならないので私のもとに診察に来ると、「涙の量が少ないのではなくて質がわるいです」というお話をしました。とってもびっくりしていました。

 

そもそも「涙の質」なんてはじめて聞いた、というのです。その方はまじめにこれからお話しする対処をしてくれました。それによって徐々に改善していけたのです。今では目薬はたまにさすぐらいです。「調子がいいので目薬はほとんどわすれちゃってます」といってうれしそうにしていました。

 

[図表3]いろいろな症状をよくする

 

このようにしてドライアイはよくなります。ではあなたのドライアイがよくなると、症状はどう変わるのかを見ていきましょう。そもそもドライアイにはどのような症状があるのかご存知でしょうか? 「目が乾く」だけがドライアイの症状ではありません。

 

ゴロゴロ・痛み・見にくさ・目の重さ・涙目・疲れ目・イライラ・うつ症状・更年期様症状・頭痛・肩こり・冷え性・充血・黒目が小さくなる・まぶたの開きがわるくなる。

 

こんなにたくさんの症状があります。

 

あなたのそのつらい症状がよくなったらどう思うでしょうか? ドライアイがよくなると見え方が大きく変わります。

本連載は、2017年1月20日刊行の書籍『本当は怖いドライアイ』から抜粋したものです。最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

本当は怖いドライアイ

本当は怖いドライアイ

平松 類

時事通信出版局

医師も軽く考えがちなドライアイ。 目薬で一時的によくなっても、根本は治っていません。 でも、安心してください。 いい対処法があるのです。この本に出会ったことが、苦しみと決別するチャンスです。 目が乾燥することによ…

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