今回は、第2次朝鮮戦争勃発なら「日本も攻撃される」理由を見ていきます。※本連載は、元外務省主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍し、現在は作家として執筆活動やラジオ出演、講演活動を行っている佐藤優氏の著書『佐藤優の地政学リスク講座 一触即発の世界』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、緊張が高まる国際情勢分析をご紹介します。※本連載は、2018年1月22日刊行の書籍『佐藤優の地政学リスク講座 一触即発の世界』から抜粋したものです。

横田基地は「朝鮮国連軍後方司令部」

前回の続きです。

 

でも、当時、国連安保理にはソ連がいましたよね。なぜソ連が拒否権を発動しなかったのでしょうか。実はその時、ソ連は、「中国の代表は台湾の蔣介石政権ではなくて、北京にいる毛沢東政権だから、そんな『インチキ中国』が代表に入るような国連安保理はおかしい」といってボイコットしていたんです。

 

だから拒否権を行使できなかった。その隙を縫って国連軍ができたわけです。そもそも朝鮮国連軍の司令部は東京にあったんです。

 

1953年7月に「朝鮮休戦協定」ができて、朝鮮国連軍の司令部はソウルに移ったんだけれども、その時に日本に後方司令部というのができた。この後方司令部は、もともとキャンプ座間にあったのですが、2007年11月に横田基地に移転した。だからトランプが降り立った横田基地は今も、朝鮮国連軍後方司令部なんです。

 

今でもオーストラリア、イギリス、カナダ、フランス、トルコ、ニュージーランド、フィリピン、タイ、南アフリカの国の軍艦が時々、国連の旗を掲げて横須賀に入ってきます。そして、定期的にそれらの国の駐在武官が朝鮮国連軍の会合を東京で行っている。現在の司令官はジャンセンというオーストラリアの空軍大佐。そのほか3人が横田基地に常駐しているんです。

第2次朝鮮戦争で日本も攻撃される!?

日本政府は「朝鮮国連軍地位協定」というものを結んでいます。その「朝鮮国連軍地位協定」では、「朝鮮国連軍は、国連軍地位協定第5条に基づき、我が国内7か所の在日米軍施設・区域(キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイトビーチ地区)を使用することができる」となっています。

 

「日米安全保障条約」や「日米地位協定」と同じように、朝鮮国連軍という形で日本政府は全面協力しているということです。だから、第2次朝鮮戦争が勃発したら、当事国として日本も攻撃される。こういう状態にあるんです。

 

トランプがあえて横田基地で演説したのは、「おい、北朝鮮、日本の横田基地に朝鮮国連軍後方司令部があるんだからな。日本と一緒にやるからな」、こういうメッセージなんです。

 

インターネットで検索すると、外務省のホームページの中に「朝鮮国連軍地位協定」という記載が見つかります。政府はうそはつきません。しかし、積極的に広報しないで、ネットの片隅の方にこういった情報を置いておくことがあるんです。

 

今回のトランプの横田基地での演説と、この「朝鮮国連軍地位協定」を合わせて見ると、トランプ大統領は北朝鮮に対して「日本と一緒にやるぜ」というシナリオを見せたと読み解けるわけです。このことは首相官邸はもちろん分かっています。そういう意味でも、今は戦争の危機が高まっているんです。

本連載は、2018年1月22日刊行の書籍『佐藤優の地政学リスク講座 一触即発の世界』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

佐藤優の地政学リスク講座 一触即発の世界

佐藤優の地政学リスク講座 一触即発の世界

佐藤優

時事通信出版局

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