一般投資家には、安定収入が得られる長期保有がお勧め
Q:売却せずに長期保有する場合、その後の運用のポイントは?
収益物件の運用が順調な場合は、必ずしも売却を考えなくてもよいものなのでしょうか。同じ物件を長く保有し続けることで、何かデメリットがあるのでしょうか?
A:安定した利益と節税効果を得ながら、物件を買い増していく
収益物件活用の利益最大化できる運営モデルとしては、できるだけ短期間に減価償却を取り、同時にインカムゲインを得て、減価償却が終わったら最後は出口戦略(売却)によって売却益も得る、しかも節税効果が最大化する長期譲渡になったタイミングで売却する、という流れになります。
しかし、物件を売ってしまえば収入はなくなってしまいます。同じような条件の物件を売却のタイミングで買えるという保証はありません。
そこで長期間にわたって収益物件を保有し続けるという選択肢もあります。細く長く収益を得ていくということです。毎月賃料収入を得ていくというのは収益物件活用における最大のメリットです。何よりも安定収入になります。
一般の方々が収益物件を活用するにあたって最大のメリットはいつまでに売らなければいけないという制約がないことです。つまり、キャッシュフローが回っていて、特に売らなければいけない理由もないのであれば、長期所有してインカムゲインを得ていればいいということになります。
必ずしも売却しなければいけないということはなく、あくまでも利益確定、および最大化のために能動的に売却をするということであって、売却を必ずしなければいけないというものではないということです。
一方、市場では出口戦略が必要な人々もいます。
ファンドや転売を目的として短期の資金調達を行う不動産会社といったプロの人々です。投資家からお金を預かって一定期間内に元金を償還(利益確定)するファンドの場合であれば、5年後に預かった元金を償還するには換金化、つまり物件の売却が必要です。このようなファンドの運用においては、5年間のファイナンスを引いている(5年後に返済するという条件で借り入れをしている)ため、ファイナンス面からも売る必要があります。
しかし、本連載の読者の場合は、基本的には、20~30年の長期で融資(アパートローン)を受けていて、急いで返す必要もないはずです。
保有している期間中に、高く売れる市況となったときに売却という選択をすることは有効ですし、先述した通り、本業の業績が落ち込んだり他の収益物件の修繕がかさんだりして、業績が落ち込んだタイミングにぶつけて譲渡益を相殺する方法もあります。
物件を増やし、賃料収入を拡大することで安定を図る
また、減価償却が終わった物件を長期保有しながら、追加で物件を取得することで、さらに数年間課税を先送りする方法もあります。つまり木造物件であれば取得から4年経過後、減価償却が終わった段階で同じように短期で償却できる木造物件を再び取得するのです。
この追加取得のタイミングでは1棟目の物件が利益を生んでいる状態ですので、追加取得分の費用はその利益と相殺されるため赤字幅は1棟目ほど大きくなりませんが、利益を出さない、もしくはできる限り抑えることは可能です。
たとえば、1棟目の減価償却が終わる5年目以降、利益が600万円出るとします。このタイミングで同じ規模の物件を取得することで、利益が50万円の赤字にまで大幅に圧縮されます。これが追加取得による利益の先送りです。もう少し規模の大きい物件を取得すれば、この利益をさらに減らすことも可能です。
さらに2棟目の物件の減価償却が終わる時期に3棟目を購入、というようにどんどん物件を追加取得して利益を先送りしていき、賃料収入(キャッシュフロー)を拡大していくことができます。
また時間の経過とともに残債も減っていきます。ある時点では完済します。そして不動産からのキャッシュフローで生活できるレベルまで行けば人生が安定していくはずです。
賃料収入ほど安定した収入はありません。変動が少ないからです。
長期保有による安定賃料収入を一定レベルまで目指すというのは「人生の安定」を得る上で非常に理にかなった活用方法です。