本業が好調な場合にも「収益物件」を活用
前回の続きです。
逆に本業が好調で利益が出すぎたときにも使えます。もちろん、本業がピンチのときに収益物件で救うというのがベストではありますが、逆の使い方もあるというのをご紹介いたします。
[図表1]本業が好調なときの売却
簿価が残債を上回っているケースで使える手法です。当社でもこの手法で経営されている方をお手伝いしたことがあります。これは相場にもよるのですが、減価償却をあまり取らないでイザというときに取っておく運用方法です。
たとえば、1億円で物件を取得し土地建物価格のうち土地の比重を大きくして減価償却を取らないようにします。10年後残債が5000万円、簿価が9000万円になっているとします。毎年賃料収入を得ているので毎年のキャッシュフローはプラスです。
この年に本業の会社で税引前利益が4000万円出て、かつ法人で税金を払えない事情があるとします。そして、不景気のため不動産の相場が大きく下がっているとします。物件の相場が5000万円でしか売れません。しかし5000万円で売ることができればキャッシュアウトはゼロでかつ4000万円の特別損失を取ることができます。その損失は本業の利益と相殺されて利益はゼロになりますので大幅な節税効果があります。
このように本業が好調なときにも利用することができるのが収益物件の利用の特徴です。つまり、時期を自由に調整して本業の状態に合わせて活用できるのが収益物件の大きなメリットです。
投資効率を上昇させるため「内部収益率」の把握を
収益物件は売却をもって利益が確定する、と繰り返し述べていますが、その利益は絶対額ともう一つの指標であるIRR(内部収益率)という指標によって示されます。収益物件は本業の業績や市況の状況に応じて利益を最大化する売却戦略を立てやすいという特徴がありますが、絶対額としていくらの利益が出たかという考え方とともに、IRRでの利益を把握することで、投資効率を上げることができます。特にオーナー社長にとっては、把握しておくべき指標でしょう。
IRR(内部収益率)とは、投資に対する収益率を表すものです。簡単にいうと、1年後の1000万円と10年後の1000万円は価値が異なるという考え方です。当然ですが、1年後の1000万円のほうが価値は高いとされます。早く資金を得られればその資金を次の投資に充てたり、本業の運転資金に充当したり、他の収益物件を取得することも可能です。
一方、10年後にしか1000万円が入らない投資ではどうでしょう。その間に別の投資を行うためには、新たな資金が必要になります。自己資金を使うか融資を受けるかですが、借り入れを起こした場合には金利も発生します。
このように、同じ1000万円というリターンが得られる投資でも、リターンを手にする時期がいつかによって、価値が変わってくるのです。
例として下記図表をご覧ください。
[図表2]IRRの考え方
AとBはともに1000万円を投資して、4年間で1110万円を回収できるモデルです。このケースにおいては投資金額および回収金額は同じですが、回収のスピードに違いがあります。Aは2年目で1000万円回収できており、再投資を行うことも可能です。一方Bが1000万円を回収するには、4年目まで待たなくてはなりません。この場合、より早く投資回収しているAのほうが投資効率の面で優れているといえます。