前回は、収益物件の売却時にオーナーチェンジする場合と、更地にしてからの売却のどちらが有利なのかを解説しました。今回は、物件の性質を見極めた出口戦略の重要性を見ていきます。

重要なのは「出口戦略」にマッチした管理運営方針

前回の続きです。

 

このように資産価値(土地値)の高い物件は、取り壊しのためには入居者がいないほうがいいのですから、新規の入居者を入れないだけではなく、既存の入居者にもトラブルなく出ていってもらう必要があります。

 

現場で取引をしていると、これを理解せずに真逆の行動をとっている売主を頻繁に目にします。特に多いのが、「収益性の物件」にもかかわらず、入居者を一所懸命出してしまって売ろうとしているケースです。これでは、せっかくのアパートの価値を損なってしまいます。

 

同様に、資産価値がある土地なのに、安アパートが立っていて入居者がいるために、高く売ることができない物件も多くあります。購入時から出口のイメージを描き、その出口に合った管理運営をしていくことが重要です。

出口を考えた賃貸管理は、一朝一夕には難しい

資産価値(土地値)の高い物件で、更地にして売りたい場合、厳密には、更地にするためのコストが減額要因となってしまいます。更地にするためのコストとは、主に入居者の退去費用や、建物の解体費用などです。

 

日本の借地借家法においては入居者が強く保護されています。通常、賃貸借契約では、オーナーさんの都合で退去してもらう場合には、入居者に引っ越し代を支払わなければなりません。立退料が必要な場合もありますし、さらには、入居者が立ち退きを拒否して、いつまでも出ていってもらえないというリスクもゼロではありません。これでは、売るに売れなくなってしまいます。

 

コストをかけずに入居者に退去してもらう方法としては、定期借家契約があります。売却を考える場合には、売却予定の時期に合わせて定期借家契約を早い段階から導入するべきです。そうすることによって、定期借家の期限がくれば、自動的に退去してもらうことが可能となります。

 

更地にするにあたっては建物の解体ではなく、入居者の退去が最も手間もお金もかかるということを念頭に物件の運用を行う必要があります。

 

そして、このように出口を考えた場合は賃貸管理が重要になります。一朝一夕でできるものではありませんので時間をかけて出口を意識した管理運営を行える管理会社の選定が必須です。

本連載は、2016年7月29日刊行の書籍『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

【物件選びから融資、管理、税務、売却まで「知らなかった」ノウハウが満載! 500棟6000戸を管理し入居率98%を実現してきた不動産のプロがワンランク上の知識とテクニックを全公開】 不動産投資のノウハウに関する情報は書籍…

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