前回は、収益物件の売却の際に「手残り」を最大化させる売り方について解説しました。今回は、「取引主体」「保有期間」で異なる、物件売却時の課税を見ていきます。

法人の場合、本業の経営状況と連動させた売却が可能

日本の税法は複雑で、その取引主体が法人であれば、他の所得と合算される総合課税となり、その取引主体が個人であれば他の所得と分離して課税される分離課税方式となっています。

 

法人で取引を行う場合には、物件の売却利益、損失はその法人の他の所得、損失に合算されますので、物件の売却で利益が出れば、本業の損失と合算することができます。逆に物件の売却によって損失が出るようであれば、本業の利益にぶつけることで利益を圧縮することができます。

 

 

その法人が不動産業でなければ、物件の売却は売上ではなく、固定資産の売却になりますので、特別利益・損失の扱いとなります。

 

繰り返しになりますが、出口をコントロールして、最大の節税効果を狙いながら売却できることが収益物件活用の大きなメリットです。本業の経営状況に連動させるかたちで売却を行うことで、経営の安定化が図ることができます。

個人の場合、所得が高い人ほど「売却効率」が良い

一方、取引主体が個人の場合は、分離課税となります。

 

先述した通り保有期間によって税率が変わります。5年超保有すれば長期譲渡で税率は約20%で済みますが、5年以内の保有だと短期譲渡として倍の約40%が課税されます。

 

 

不動産の売却にかかる税金は他の所得と切り離して考えられるので、年収が1億円の人でも500万円の人でも、収益物件の売却益5000万円にかかる税金は一律で1000万円(長期譲渡の場合)です。

 

これは、株式の配当や利子所得と同じ考え方です。高額所得者でも、その所得と合算されることはありません。

 

たとえば、1億円の所得に収益物件の売却益5000万円が合算されて、合計1億5000万円の所得に対する課税とはならないということです。そのため、個人の所得が高額な人ほど個人所有の不動産の売却は効率がよいといえます。

本連載は、2016年7月29日刊行の書籍『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

【物件選びから融資、管理、税務、売却まで「知らなかった」ノウハウが満載! 500棟6000戸を管理し入居率98%を実現してきた不動産のプロがワンランク上の知識とテクニックを全公開】 不動産投資のノウハウに関する情報は書籍…

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