地主系大家と相続税対策資産家は物件の差別化に消極的
(1)田舎における不動産投資のプレイヤーとは
地域にかかわらず、不動産賃貸業(不動産投資)を営んでいる方は実はたくさんいます。不動産賃貸業は、下記の4種類に分類できます。
●不動産投資家
●不動産会社
●地主系大家
●相続税対策資産家
地域によって、どの不動産賃貸業を営んでいるかの割合は変動しますが、「田舎」では地主系大家の割合が多くなります。地主系大家と相続税対策資産家は、元々地元に資産を持っているため、融資の通りやすさや物件規模において我々のような弱小投資家には勝ち目はありません。
そのため、持たざる者なりの戦い方をしなければいけません。でも、実は簡単なのです。周辺の物件と差別化を行うだけで良いのです。
なぜなら、地主系大家と相続税対策資産家には高齢の方が多く、賃貸業を管理会社に任せっきりの方が多いからです。現に私の所有物件の売主は、法人を除くとすべてご高齢の地主系大家で、高齢故にアパート経営ができなくなったり、死ぬ前に現金化したいという方ばかりでした。
このような方々が、物件の差別化について積極的でしょうか? 私はいまだかつてそのような方に会ったためしがありません。
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(2)相続税対策の資産家を相手にする必要なし
相続税対策におけるアパート経営と不動産投資は、同じ不動産賃貸業ですが、目的がまったく違います。そもそも、我々不動産投資家は資産形成を目的としていますが、相続税対策は資産を毀損することを目的としています。
相続税対策のスキームは、資産と負債(アパート建設費用の融資金)で相殺させることと、不動産を相続税評価する際に基準となる固定資産税評価額で評価することにあります。固定資産税評価額は実勢価格より大幅に安いので、現金を所有するよりも資産総額を抑えることができるので、節税効果があるのです。また、ローン返済はサブリース契約(家賃保証)からの収益で行っています。
そのため、相続税対策で始めた賃貸業は、賃貸経営に対して無頓着である場合が多いのです。建設会社も相続税対策であることをいいことに、新築アパートの施工金額を高く設定しているため、結果的に募集家賃も高くなっています。
つまり、不動産投資家ほど諸条件や内装設備による差別化に柔軟な対応がされないため、競争相手にはなりません。不動産投資家は柔軟に顧客本意の経営を行えば大丈夫なのです。
唯一気を付けないといけないのが、2015年に行われた相続税改正によって、新築アパートが乱立している点です。この乱立によって、特定した地域の賃貸市場が崩れることが懸念されるので、購入予定の物件がどのような地域なのかを把握する必要があります。
(3)不動産会社の自社所有物件に注意
「田舎」の地域によっては、規模が大きな不動産会社があります。そのような不動産会社では自社所有物件を管理していることがよくあります。
不動産会社が自社所有物件を管理するということは、入居希望者を大家に仲介せずに自社所有物件に入居させることができます。しかも、入居希望者を自社物件に入居させる場合は仲介手数料が発生しないため、入居希望者にとってもメリットがあります。
自社所有物件に優先的に入居させることができるため、賃貸業でも優位に立っています。賃貸に向く良い物件の仲介を依頼されれば、市場に出すことなく自社で購入することができ、仲介手数料も発生しません。そのため、大きな不動産会社にはどうしてもかなわないのです。
だからといって大きな不動産会社と付き合わないのではなく、大きな不動産会社は大きくなるに至ったノウハウを持っているので、周辺状況や開発情報を交換するなど味方にすれば良いのです。