前回は、「肩の痛み」を感じたら、速やかに医療機関を受診すべき理由を解説しました。今回は、効果が上がらず、先が見えない治療の今後をどうするべきかを考えます。

四十肩・五十肩の完治には運動療法等が必須だが・・・

つらい痛みが取れると患者さんはホッとして、ほぼ治ったものと考えがちです。しかし、四十肩・五十肩の場合は、その後に拘縮の時期がありますので、ここできちんと肩を動かす運動療法やリハビリを行わないと、本当の意味での完治は難しいものなのです。

 

患者さんの多くは、最初のうちは早く元の状態に戻りたいがゆえに頑張ってリハビリのために通院しています。しかし、2カ月、3カ月と続くうちに、「いつまで続くのだろう」と先が見えないことに不安を感じます。そして、痛みも取れたし、ある程度は肩も動くようになって日常生活にそれほど不自由を感じないからと、通院の足が遠のいてしまいます。

 

ところが、それから1年経っても現状のままで、それ以上は肩が動いていないことに気づき、再び受診するケースも少なくありません。実は、その中に腱板が傷ついている人がいたりします。

 

これは、患者さんがリハビリの目的をよく理解していなかったり、医師の説明不足、つまり患者さんと医師との間でコミュニケーションがとれていない結果ともいえます。

 

毎日リハビリに通って、電気治療を受けたり、運動療法を行ったりしているだけで、医師の診察がないために、自分の肩がいまどのような段階にあるのかを、患者さんが把握できないからと思われます。

 

整形外科の場合は、理学療法やリハビリだけに通院することが多く、これ自体に問題はありません。ただ、患者さんの症状がどのように改善しているのかを医師はチェックする義務がありますので、定期的に診察を行います。リハビリは、週単位で変化するものではありませんから1カ月に1回、少なくても3カ月に1回は診察をしているはずなのです。

 

また、毎日患者さんと接している理学療法士が、最も患者さんの変化に気づける立場にいますので、患者さんの筋肉を触ったりして動きの改善の程度を確認したり、筋肉の痩せ具合などを観察して、「おかしい」と感じたときには医師に診察してもらうことをアドバイスしています。これによって患者さんの腱板断裂を早期に発見できることもあるのです。

 

ただし、これも医師と理学療法士との関係が良好で、医師に対して理学療法士や看護師などのスタッフが、自由に意見交換のできる職場環境であればの話です。

改善しなければ、他の医療機関の受診も選択肢に

基本的に、初診でレントゲンを撮っていると、その後にまたレントゲンを撮ることはありません。特に四十肩・五十肩はレントゲンで異常は認められないこともあり、そのまま治療が進められるケースがほとんどです。

 

そして、リハビリを続けても症状の改善が見られないときには、注射療法を併用したりしながら漫然と同じ治療を続けることとなります。

 

しかし、患者さんと真摯に向き合っている医師であれば、注射療法を行っても効果が得られないときには、別の病気も疑ってMRIを撮ってみることを提案し、自分のクリニックに設備がないときには検査を行える医療機関を紹介してくれます。

 

ですから、もしも長期にわたって同じ治療を繰り返し、それで何も改善していないならば、他の医療機関を受診してみるのも一つの方法かもしれません。

「肩」に痛みを感じたら読む本

「肩」に痛みを感じたら読む本

鈴木 一秀

幻冬舎メディアコンサルティング

四十肩(五十肩)の発症率は70%を超え、もはや国民病と言っても過言ではありません。 一般に、肩の痛みや違和感は放置する人が多いのが実情ですが、手遅れの場合、尋常ではない痛みと共に日常動作をままならなくなり、最悪の…

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