ますます激しくなる「グローバル企業間の競争」
2010年に英語公用語化を行った楽天は、その結果として採用するエンジニアの質が上がっているようだ。
楽天のようなインターネット企業では技術が非常に重要だが、日本人エンジニアを採用しようとすると、どうしても質が落ちてしまう。日本ではコンピュータサイエンスを専攻した新卒者が、年間約2万人しかいないからだ。
それに対して、アメリカは約6万人、中国は約100万人、インドは約200万人もの新卒者がいる。母数の多いところから人を雇えるかどうかは、採用するエンジニアのクオリティに直結する問題だ。
この流れは、いまはまだ英語公用語化を行った少数の企業で起きているだけにすぎないかもしれない。だが、競争力の強い企業が生き残っていくことを考えれば、いずれほとんどの日本企業が、英語を公用語にして、外国人採用を行うことになるだろう。それくらい、グローバル企業間の競争は待ったなしになってきている。
今後は「海外の優秀な人材」と競争を余儀なくされる
日本を代表する大手メーカーも、人事制度を年功序列から成果主義に変えようとやっきになっている。
たとえば日立製作所は、世界中にちらばる管理職を格付けして、比較する制度を整えた。これによって、外国人が本社の重要ポストに抜擢される道が開かれた。これは、アメリカの企業を買収したときに、社内で不要な人材を辞めさせることができなかったために、事業運営が遅れたことへの反省を活かした制度だ。
使えない人材はばっさりと切って、浮いたお金で優秀な人材を新たに採用するのがアメリカ式だ。そのようにして、常に人材を入れ替えているから、転職市場も活性化するし、採用されたい人は勉強して自分を磨くことを忘れない。
競争があるから成長があるのは世界中どこでも真理なのに、日本だけが競争をなくそうとしているかのように見える。
最も残酷なのは、年功序列で給料が上がった50代でリストラにあい、慌てて転職しようとするも給料が半分になるという場合だ。すでにマネープランを立て、ローンを組んでいるなかで大幅な家計の見直しを強いられることもある。こうなってしまう前に自らの実力について考え、対策を講じなければならない。
日本でもほとんどの上場企業は成果主義の人事制度を取り入れている。世界中に子会社を展開するグローバル企業では、世界基準の人事制度を取り入れなければ、公平な評価ができないからだ。
ただし、ここでの成果主義は外国のものとは異なる。なぜなら必ずしもパフォーマンスに対して支払われるというものではないし、失敗しても大幅に降格することや、クビになることはないからだ。また、会社に大きな利益を与えたとしても大きな見返りがあるわけではなく、小幅な成果主義に留まる。
日本人で新卒入社だからと優遇されることはなくなり、国籍に関係なく、世界中の人材との競争にさらされる時代が始まっている。
それでも、日本企業では日本人の男性を優位に扱うところがまだ多く、グローバルで活躍する優秀な女性社員はこのような日本企業に入社を選ばないと考えられる。彼女たちの目には、「外国人女性は当社には入らないでください」という無意識のメッセージが出されているように見えるのだ。
この話は次回に続く。