前回は、自治体病院を支える「隠れた医療費」とは何かを説明しました。今回は、国立・自治体病院にまつわる「繰入金」の問題について見ていきましょう。

多額の「繰入金」を受けながら、民間に劣る国立病院

敗戦後まもない日本では病院数が少なく、民間病院の量も質も共に乏しかったため、国公立病院が日本医療の質の向上に大変寄与してきたことは間違いありません。

 

もちろん今もその役割を果たしていますが、医療の質という意味では、現在では高度な技術を用いる先進医療のほとんどが、民間病院でも十分対応可能になってきています。

 

一定の基準と財政的基盤があれば、民間病院もこれらの病院に負けない医療を行い、優れた医師を育てるための卒後教育を行う医療機関になることもできます。すでにそうした優れた民間病院は少なからず存在します。

 

しかし一方で、毎年何億円という多額の「繰入金」を受けながら、民間に見劣りする国立病院や自治体病院があることも事実です。

 

こうした現状を踏まえると、医療問題を考える上では国立病院や自治体病院の果たす役割について、民間病院の関係者も交えた議論をもっと詰める必要が出てきています。

繰入金を早急に「診療報酬」に置き換えることが重要

中でも大きな問題の一つは、国公立病院につぎ込まれている多額の「繰入金」を早急に、また段階的に診療報酬に置き換えていくことです。

 

科学、医学の進歩は目覚ましく、1〜2年で先進医療でなくなるものは多くあります。「先進医療とは何か」「不採算医療とは何か」ということを診療報酬でももっとはっきりさせ、定期的(2年毎など)な見直しが必要でしょう。

 

不採算と思われているものでも少し点数表を変えるだけで、すぐに採算医療になり得るのです。たとえば、一般救急、小児救急医療、周産期医療等もその中に入ります。

本連載は、2017年5月30日刊行の書籍『病院崩壊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

病院崩壊

病院崩壊

吉田 静雄

幻冬舎メディアコンサルティング

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