今回は、会社の経常利益が黒字でも、銀行の融資担当者が個人保証をつけたがる理由について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「ガイドラインに沿った形で進めさせていただきます」

前回の続きです)

 

「個人保証に頼る融資をするな!」
というのが、金融庁の方針です。
しかし、
融資現場の末端は相変わらず、個人保証に頼りたがるのです。

 

銀行支店の担当者から、
「個人保証をつけていただけないか?」
と言われた経営者が、財務局へ電話をしました。
財務局は、「言ってきただけなら、特に問題はない。」
となり、「ここへ電話してみてください。」と、
銀行の問合せ窓口の番号を教えてくれました。
で、その番号に連絡したあと、20分ほどで、
個人保証を要求してきた支店の支店長から、
経営者に電話が入ったのです・・・。

 

「今からお伺いしたいのですが、ご都合いかがでしょうか?」
となり、経営者が対応しました。
「要件はどのようなことでしょうか?」
「今しがた、本部から連絡がありまして…。」
「わかりました。その件ですね。お待ちしています。」
早速に、支店長と担当者の2名が、会社に来ました。

 

「この度は、お手数をおかけして、申し訳ございません。
個人保証のお願いの件につきましては、
取り下げさせていただきます。
社長のおっしゃるとおり、ガイドラインに沿った形で、
進めさせていただきます。」
「それはそうですよね。
 当社の財務体質で、何かそんなに問題ありますでしょうか?」
経営者は、支店長に投げかけました。
単年度で若干の営業赤字とはいえ、自己資本比率は40%を超えています。
「いえいえ、特に問題とは感じておりません。」
「じゃあどうして、個人保証をお願いされたんでしょうか?」
「まあ、それはそのう、営業黒字が続くなか、
 若干とはいえ、営業利益が赤字であったものですから…。」
「それだけですか?今は営業黒字で、今期末は黒字見込みですよ。」
「さようでございますか。
 こちらのほうで先走って、失礼なお願いをしたようで、
 誠に申し訳ありませんでした。」
といったようなやりとりがあったのです。
支店長は、事の経緯にあまり関わっておらず、
担当者が独断でお願いしてきたような様子、だったそうです。
ただ、そこは、支店長のハッタリかもしれません。

「決算書を読む力」が衰えている融資担当

いかがでしょうか?やはり銀行の担当者は、
営業利益を相当気にしている、ということです。
しかも今回の場合、
営業利益が若干赤字、経常利益は黒字、だったのです。
さらに言えば、
営業利益しか、決算書を見てわかるところがない、
というくらい、融資担当の決算書を読む力が衰えている、
ということです。結局、
融資担当でさえ、その多くは、損益計算書しか、見ていないのです。

 

同時に、若干とはいえ、営業利益が赤字になった際は、
銀行にその理由や、その後の業績推移を、
経営者は説明しておくことです。
今回のケースでは、
経営者が融資に関する知識を持っていたので、反撃に出て、
個人保証のお願いを、取り下げさせることに成功しました。
もし、このような知識がない経営者なら、
「わかりました。」となり、個人保証を了承したかもしれません。
で、「やっぱり赤字にしたら銀行は何か言ってくるんだ。」
と、思い込んでしまうのです。
だから、銀行融資に関する知識を、備えておいてほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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