
前回は、「顧客本位の業務運営に関する原則」の定着に向けた、金融庁の取組みを解説しました。今回は、2017年7月GPIFが運用を開始した「ESG投資」の概要を見ていきます。
<4/22(木)・WEBセミナー&個別相談開催>
税務当局は海外投資・資産の情報をどう収集しているのか?
口座情報交換制度を踏まえた「海外活用」の進め方
>>詳細はコチラ<<
非財務情報を考慮し、収益を追求する「ESG投資」
最近、ESG投資が話題になり始めています。1つのきっかけは、2017年7月3日に公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が環境や企業統治などを重視した企業を選ぶESG投資の運用を開始したと発表したことです。日本株の3つのESG指数を選定し、同指数に連動したパッシブ運用を開始しました。今回から、ESGの概要、その歴史、海外での動向、日本での進展などを解説していきます。
ESG投資とは、キャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報といった従来からの投資尺度だけでなく、Environment(環境)、 Social(社会)、Governance(ガバナンス)などの非財務情報も加えて、収益を追求する投資手法です。
[図表1]

非財務情報を考慮する投資手法は、SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)が知られています。SRIは1920年代に米国でキリスト教的倫理の観点から、ギャンブルやタバコ、アルコール、武器などを取り扱う企業を投資対象から外すネガティブ・スクリーニングをしたことから始まったと言われています。
ESG投資が広く知られるようになったのは、2006年4月に国際連合が国連責任投資原則(UNPRI)を立ち上げたことがきっかけです。PRI(責任投資原則:Principles for Responsible Investment)とは、2006年当時の国連事務総長であるコフィー・アナン氏が金融業界に向けて提唱したイニシアティブで、機関投資家にESGを投資プロセスに組み入れるべきとしたガイドラインです。
35の行動を示す、6つの「責任投資原則」
責任投資原則は次の6つの原則からなり、35の行動が示されています。
1.私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
2.私たちは活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
3.私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
4.私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
5.私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
6.私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。
2017年4月時点で1700を超える年金基金や運用会社などがPRIに署名しています。このうち年金基金などアセットオーナーの署名は約350社、その運用資産残高の合計は17兆ドル(約1800兆円)近くに達しています。
[図表2]

次回から、GPIFのESG投資への具体的な取組みを説明します。
【関連情報&イベント・セミナー】
※【4/20開催】「太陽光発電」の2021年売買動向&案件説明会
※【4/20開催】<会場限定>保険を活用した資産移転の最新事例
※【4/22開催】相続税の「払い過ぎ」を回避する不動産の評価術