今回は、機関投資家が「四半期決算」を意識し始めた理由を見ていきましょう。※本連載は、さわかみホールディングスの代表取締役で、日本における長期運用のパイオニアとして知られる澤上篤人氏の著書、『これが長期投資の王道だ』(明日香出版社)より一部を抜粋し、株式「長期投資」の極意を紹介します。

長期投資家の視点で見れば、過剰反応にも思えるが…

マーケットに群がる投資家たちは今期来期の利益予想を材料に買い急いだり、売り逃げに走ったりで忙しい。彼らのドタバタで相場が上へ下へと揺れ動くのを、長期投資家はいつも横目に眺めている。

 

そして、狙いを定めている企業の株価が大きく売られれば、ありがとうといって買い増しの姿勢を貫く。

 

ところが最近は、米国や日本の機関投資家が企業の四半期決算を、やたら意識するようになってきた。今期来期の利益予想どころか、四半期毎の決算にも過剰といえるほどに反応し、投資ポジションを調整しようとするのだ。

 

われわれ長期投資家からみれば、四半期決算の数字が良かった悪かったで、なにをそこまで慌てなければいけないのか理解に苦しむ。もちろん、四半期決算をみて予想より悪かったからと機関投資家が売ってきたら、こちらは「ありがとう」といって安いところを買わせてもらうだけだが。

 

この違いは、どこからくるのか? 機関投資家はたしかにプロの運用集団ではある。だが、彼らの多くは「短期のディーリング売買におけるプロ集団」となってしまっている。決して、本格的な長期の株式投資をしているわけではない。

運用成績が悪ければ、預かり資金や顧客失う機関投資家

機関投資家は年金など投資家顧客から、毎年の成績が評価される。成績が良ければ、翌年にはより多くの資金を預けてもらえる。前年の運用成績が競争相手に負けたりすれば、預かり資金を減らされるか、顧客そのものを失う。

 

また、運用資金獲得のマーケティングの場でも、前年の成績が大きくものをいう。

 

投資家顧客に対し、これまでの累積運用成績(トラックレコードという)がどれほどすばらしかったかを訴えると同時に、毎年どれだけ安定的に成績を出せる体制を整えているかを客観的に示さなければならない。

 

毎年の運用成績を追いかけるのが資金運用だが、そこで他社との成績競争に勝たなければならない。そうなると、ちょっとした情勢変化や四半期決算に過剰反応するのも当然である。それが機関投資家の運用現場である。

 

彼らからすると、ありとあらゆる投資の収益機会を瞬発力よろしくとらえなければ、年間のパフォーマンス競争に負けてしまう。また、株価下落リスクから素早く逃れないと、成績悪化で命取りになる。

 

そんなわけで、機関投資家は業績数字のちょっとした変化にも過剰反応するわけだ。

これが長期投資の王道だ

これが長期投資の王道だ

澤上 篤人

明日香出版社

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