今回は、長期投資家が大切にする「購入」と「売却」のリズムとは何かを見ていきましょう。※本連載は、さわかみホールディングスの代表取締役で、日本における長期運用のパイオニアとして知られる澤上篤人氏の著書、『これが長期投資の王道だ』(明日香出版社)より一部を抜粋し、株式「長期投資」の極意を紹介します。

大きく下がった銘柄を「迷わず買う」

長期投資家は平気な顔して暴落相場を買いにいく。そして、相場が戻ってくるにつれ、適当なところから利益確定の売りに入っていく。そして、大きく下がったら、また買い出動する。このリズムを、長期投資家はとことん大事にする。

 

ところが、「もうすこし安いところがあるかも」とか「この上昇相場どこまでいくのだろう? できるだけ天井近くで売りたい」なんて欲を出しはじめたが最後、たちまち相場追いかけ投資に引きずり込まれてしまう。長期投資のリズムはガタガタになる。

 

その点、機関投資家がやっている資金運用には、このリズムがまったく感じられない。マーケットにしがみついて、毎年きちっきちっと成績を出そうとするから、ガチガチの計算づく運用になってしまう。

 

彼らがよく口にする「3月の本決算までに成績を固めなくては」なんてプレッシャーがあったら、まともな投資などできない。「ちょっと様子をみよう」「底値を確認しなければ、とても買えない」とかで、相場にしばられて身動きがとれなくなる。

 

長期投資のリズムは、安いところで買い出動することを、投資の起点にする。「まだ下値はあるかも、しばらく様子をみよう」なんていっていたら、いつまでたっても買えない。長期投資のリズムもなにも、あったものではない。

 

ある程度はアバウトで構わないから、安値はとにかく買うことだ。ドスーンと下がったところを買うことから、長期投資をスタートさせよう。

「まだ下がるかもしれない」とは考えない

おもしろいもので、短期投資家やディーリング運用ではこれができない。「まだ下がっている、どこが底値となるか知れたものではない。やばいぞ」と、下げ相場に身も心も沈んでいく。

 

そんな状態で、彼らが買いを考えるなんてあり得ないこと。むしろ、売りを出したくなる。

 

多くの投資家が「とても買えない」といっている状況下では、売りものがどんどん出てくる。ところが、買いはほとんど入ってこない。そこを、われわれ長期投資家はひとり買いにいくのだ。予想以上に安く買えるなんて、しばしばである。

 

安いところをたっぷり買っておくと、相場がほんのちょっと戻すだけで、早くもそこそこの投資収益を回収できる状況になる。どこで売るかは投資家それぞれの自由だから、適当なところで利益確定に入って構わない。

 

そこで現金化しておくからこそ、次の暴落局面を再び買いにいけるのだ。これが長期投資のリズムである。そのあたりを以下の図表のイメージで、しっかり頭にたたき込んでおこう。

 

[図表]長期投資のリズムをつかんでしまおう

 

◎相場の上下変動にはつかず離れずで、のんびり眺めているぐらいがちょうど良い

 

◎前もって、長期で応援するぞと腹を固めた銘柄を、いくつか選んでおく

 

◎なにかの加減で大きく下がったら、すかさず応援買いに入る

 

◎その時、「どこまで下がるのだろう」とか「下値のメドは」とかを意識しない

 

◎それをいいだすと、すぐ相場に引き込まれてしまう

 

◎どこかで株価が大きく上昇してきたら、適当なところから売り上がっていく

 

◎売る時も、「まだまだ上がりそう」とか「天井はどの辺だろう」といった相場の読みはしない

 

◎適当に利益確定しておき、どこかで大きく下げたら、再び買い出動する

 

◎この「安く買っては、高く売る」のリズムを、トコトン大事にする

 

◎相場など、自分の人生で数え切れないほど、上がったり下がったりを繰り返すもの

 

◎その上げ下げの一部分をリズムよく頂いていくだけで、再投資の複利効果がきいてきて、素晴らしい財産づくりができてしまう

 

そう、長期投資家は買いに入る時こそ、長期の時間軸で行動する。だが、売る時は3カ月後とか、案外と短期も大ありなのだ。安い時にためらうことなく買うことで、リズムの起点をつくっておきさえすれば、その後は短期の利益確定もありと考えて良い。

これが長期投資の王道だ

これが長期投資の王道だ

澤上 篤人

明日香出版社

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