「儲かりそうな株」を買っても儲からない理由
一般的な株式投資でなかなか儲からない理由のもうひとつは、儲かりそうな株を買おうとするところにある。
静かに考えたら簡単にわかること。儲かりそうな株なんて、万人の眼にも儲かりそうと映るはず。ということは、みながどんどん買っている、つまり株価は既に上がっているわけだ。
儲かりそうな株を買うチャンスを、あなただけに残しておいてくれるなんて、あり得ないこと。そんなのがあるとしたら、詐欺話でしかない。これは株式投資のみならず、世の常識であろう。
また、儲かりそうと思える株は、現に株価が勢いよく上がっている。だから、「ここで買えば儲かる」と思えてくるものだ。上昇相場の熱気に煽られて、儲かりそうだと思えてしまう。そういった心理に引きずり込まれるのも、相場の魔力である。
勢いよく値上がりしているものに飛び乗ることで、上昇相場をさらに勢いづけて値幅を取ろうとするのを、「順張り投資」という。日本では昔から上昇相場に乗って、順張り投資で儲けようとする考え方が一般的で、「儲かりそうな株を買おう」は、まさしくその最たるものである。
順張り投資は短期のディーリング運用においては輝きをみせるものの、長期投資家には無用の長物である。すでに値上がり途上にあるものを追いかけ買いしようなんて、ひとつ間違えると高値づかみしてしまうことにもなる。
そんなリスクを冒すよりも、まだ誰も買おうとしないから安値に放置されたままの株を拾っておくに限る。これが、よく「逆張り投資」といわれる投資手法である。
長期投資における「逆張り投資」の本当の意味とは?
しばしば長期投資は逆張り投資をしているように思われるが、本質は違う。世にいう逆張り投資とは、現在の相場の主流となっている投資テーマから見離されている株を、先まわりして拾っておこうというもの。
あくまでも、いまの上昇相場の範ちゅう外にある不人気株が投資対象である。つまり、相場を追いかける投資からは一歩も出ていない。「そのうち相場の流れが、こちらへ向ってきてくれたら儲かるぞ」と狙い待ちするのが、逆張り投資である。
ところが長期投資では、ただひたすら「価値あるものを、ひどく売られている時に買っておこう」とする。だから、全体相場が下げている時ほど、気合が入ってくる。逆張り投資家ですら買えない暴落相場でも平気な顔して買い向かえるわけだ。
したがって、長期投資家が買い出動する時は、「こんな暴落相場で買いにいくなんて、損させられるだけだ。どう考えても儲かりそうにないのに」と、マーケット中でバカにされるのがオチ。それぐらいがピッタリくる。
低迷相場や暴落局面で買いにいっても、とても儲かりそうにないと思えてくるもの。だから、誰も買おうとしない。そこを、ひとり買いにいく長期投資家は、申し訳ないような安値で好きなだけ買い仕込みできるわけだ。
本連載では幾度でも繰り返すが、投資は安く買って高く売るのが鉄則である。儲かりそうな株を追いかけて、わざわざ高値で買うことはない。