今回は、長期投資では「企業の短期利益予想」が無視できる理由を見ていきます。※本連載は、さわかみホールディングスの代表取締役で、日本における長期運用のパイオニアとして知られる澤上篤人氏の著書、『これが長期投資の王道だ』(明日香出版社)より一部を抜粋し、株式「長期投資」の極意を紹介します。

「企業の利益予想」は短期投資家にとって重要だが…

マーケットでの株価変動は、株式トレーダーや短期投資家にとっては飯のタネである。年がら年中それこそ朝から晩まで、相場を追いかけては値ザヤ稼ぎをしようとする人たちからすれば、株価が上でも下でも動いてくれないと困る。飯の食い上げとなってしまう。

 

彼らは株価が人気化してくれるかどうかの材料を、あれやこれやと追い回す。その中で、とりわけ企業の今期あるいは来期の利益予想の修正は大きなインパクトを持つ。それが故に、株式市場では彼らのみならず多くの投資家が最新の利益予想に一喜一憂するわけだ。

長期投資は「株価が上がるまで保有」すればよい

よく株式市場では、円高で企業の利益予想が下方修正されるとかを騒いで株価が大きく下げたりする。これも同じこと。円高イコール企業の業績にマイナスという、昔からの固定概念で条件反射の売りを出してくる。

 

われわれ長期投資家からみれば、今期来期の利益予想や業績数字といったものは、ほとんど無視である。そんなもの、株式トレーダーや短期投資家たちがマーケットで食い散らかした残りカスにすぎない。

 

なにしろ、彼らは株価を追いかけるのを仕事としているから、すべてにおいて動きが早い。したがって、最新の利益予想も即座に株価に織り込まれてしまう。

 

さらにいえば、株価の先行性というものも忘れまい。株価はいつでも業績や景気動向に半年から1年は先行するといわれている。昔から、相場は理外の理にあふれているといわれるが、株価の先行性もそのひとつである。

 

ともあれ、企業の利益成長によって投資価値が高まっていってくれれば、株価も上がりやすくなる。それは間違いない。経済情勢やマーケット環境によって、株価が長期低迷することはあるとしても、投資価値の高まりはいずれ株価上昇に反映される。

 

いつか、どこかで株価上昇に反映されるのであれば、その時までずっと株主として保有し続ければいいだろう。保有している間にも、株価が大きく売られたりしたら、どんどん買い増していくだけのこと。

 

ここに、長期投資家の考え方が凝縮される。

これが長期投資の王道だ

これが長期投資の王道だ

澤上 篤人

明日香出版社

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