トレード実践者でも予測的中率が「3~4割」の現実
今回は前項で示した、「経費」について考える。
ある日、私の娘が「株をやってみようかなぁ」とつぶやいた。そして、「でも、損するのがイヤだ」と続けた。すかさず私は、「やらないほうがいい」と答えた。
「相場は損をするもの」と表現したら語弊があるが、「全戦全勝を狙うものではない」と考えるのが常識だ。こう説明すると、多くの人はうなずく。だが、「全戦全勝でなくても、上手な人は7〜8割勝つんでしょ?」と言う。
実際には、もっと負けが多いと考えてほしい。
「上か下か」で当たる確率を考えると、50%である。しかし、上がると予測して買ったところ、下がることはなかったが上がらなかった、あるいは2割は上がると考えたのに数%しか上がらなかった・・・これらの結果も「当たり」とはいえない。
トレードは「時間」が問題だから、「3カ月以内に2割上がる」と予測して動きがなかったら、損はないものの「勝ちではない」と判定せざるを得ない。こう計算すると、予測が当たる確率は3分の1、33.3%にすぎない。これが現実だ。
実際、トレード実践者の肌感覚を聞くと、「予測の的中率?3割か4割だろうね」と答える人がけっこういる。
その程度の確率で、どうやって利益を出すのか──。負けたときの値幅または数量が少なく、買ったときの値幅または数量が大きければ、予測の的中率が5割を下回ってもトータルはプラスになる。詳しくは第6章(※書籍参照)で説明するが、「損小利大(そんしょうりだい)」という考え方だ。
「損するのは絶対にイヤだ」
繰り返すが、明日の価格さえ誰にもわからない状態で競争するのが、金融マーケットだ。予測をピシピシ当てるには、タイムマシンを開発する以外に方法がないのである。
損するのは絶対にイヤだ──こう考えてトレードをスタートするとどうなるか。
上がると思って現物を買った、上がらない、「現物だから」と放置する(問題の先送り)・・・突然上げ始めるかもしれないが、さらに下がる可能性があり、少なくとも、貴重な資金を寝かせたまま相当な期間をムダにする。街の商店にたとえるなら、店の棚も倉庫も売れない不良在庫ばかりで、新たに商品を仕入れる資金がない状態だ。
下がると思ってカラ売りしたら、意に反して上がる、「ここでやめたら負けが確定」とガマンする・・・どんどん上がり、追い詰められて大幅な損切りを余儀なくされる。
設備投資も人手も不要なのが、金融取引だ。売買手数料なども経費だが、最大の経費は見込み違いによる損失である。これを小さい金額に抑え、なおかつ時間もかけない、これがプロの思考である。