「入居率の偽装」を行う不動産会社に要注意
前回の続きです。
入退去の履歴も確認する必要があります。直近数カ月の入居が不自然に多い場合は、入居率の偽装が行われているかもしれません。
物件を高値で売却するために、知り合いを高めの家賃で入居させ、賃料収入を意図的に上げて「満室」物件として売却する手法は、取引をしている現場では稀に見られます。当然、利回りを偽装するためだけに入居していた人たちは、物件が売れてしまえば一斉に退去してしまいます。物件を買った人は、空室になりキャッシュフローが厳しくなるだけではなく、賃料収入が下がってしまうので、初期段階で物件価格が大きく下がってしまうということになってしまいます。
実際当社に管理を委託された物件の中には、売主が意図的に知り合いを入居させていて、管理開始直後に約半数の部屋で退去が発生したという事例もありました。空室を埋めることはできますが、想定の賃料から10%以上下げなければならず、物件の価格が大幅に下がってしまいました。
レントロールの妥当性や近隣の家賃相場を確認するには、地元の賃貸仲介会社に直接ヒアリングすることが確実でしょう。地元の賃貸の仲介や管理会社は、その物件の家賃相場や入居者層の傾向、入居付けのしやすさなどの情報をしっかりつかんでいます。過去にその物件に直接客付けした経験のある賃貸仲介会社、および担当者に話を聞くことができればベストです。
また、その物件を購入後は、長い付き合いになる可能性があります。ヒアリングは電話だけで済ませるのではなく直接訪問して、どんな不動産会社なのかも確認しておくとよいでしょう。
[図表]チェックしよう!
物件取得後に「入居率の改善」が可能か判断
物件取得時において、入居率は注意すべき事項です。現在の入居率が低いのであれば、その原因を知ることが重要です。たとえば、現在のオーナーさんが資金的な面で原状回復をする余裕がなく新規の募集ができないのであれば、取得後の工事をしっかり行うことで改善は可能です。
しかし、迷惑住人がいて他の住人が退去してしまうとか、そもそも不人気な地域でその一帯の入居率が低いという事情であれば、そう簡単に解決はできません。また、先述したように物件で殺人事件が起きて入居率が低いという事情も解決することは難しくなります。
また、もし現在の管理会社の能力不足のために入居率が下がっているのであれば、管理会社を変更することで解決します。
つまり、入居率を見るうえで大切なのは、物件取得後に入居率を改善できるのかどうかです。そこが判断の分かれ目になります。その判断のためには、入居率が低い原因を特定する必要があるということです。