「確認済証」のない物件には、原則手を出さない
前回取り上げたように、修繕不可の物件は避けるべきです。建物に致命的な欠陥を持った物件を取得してしまうと、その時点で収益物件の活用に失敗しているといえます。
この他の建物の問題として違法建築物件というものがあります。違法建築とは、建築基準法に違反していたり、未登記の増改築があったりする物件です。最も多いのは、建蔽率や容積率がオーバーしている物件です。建蔽率・容積率オーバーの物件のほとんどが、建築後に違法に増築した物件ですが、なかには新築時に建築確認を取ったあと、確認図面とは違う物件を建てた悪質なケースもあります。また建築確認も取らないで、かつまったく法令を守らずに建物を建ててしまっているケースもあります。
※確認済証とは、建築物の工事に着手する前にその計画が建築基準法に適合するかどうかを審査し、内容が確認された場合に発行されるもの。検査済証とは、工事途中の中間検査や工事完了時の完了検査でその建物が建築基準法に適合しているかを確認し、合格した場合に発行されるもの。
確認済証はほぼすべての物件にあるものなので、ない物件は原則は手を出すべきではありません。検査済証は当社の取引実績では約1〜2割くらいの物件にしかない(特に木造の場合はほとんどない)ので、こちらはなくても問題ないでしょう。
違法建築物件には、基本的に銀行融資がつきにくいので、ノンバンクなどの高金利な融資を受けるか、自己資金で購入するしかありません。一見利回りが高くても、高金利で融資を受ければ手元に残るキャッシュは減りますし、キャッシュアウトを伴うのであれば収益物件の優位性がなくなります。なにより、売却時にも買い手がつきにくく流動性が低いので、買わないほうがよいでしょう。
なお、同じ容積率・建蔽率オーバーの物件でも、建物建設時には適法であったものが、その後法律が変わってしまって法令不適格になってしまった「既存不適格」の物件があります。この場合は、違法建築ではありません。個別の事情によりますが、当社が取り扱っている範囲においてはほとんどの金融機関で融資を受けられています。
「重要事項説明書」の確認、インターネット検索も必須
最近では、物件の「歴史」も「変えられないもの」に加わってきました。建物の履歴を調べることが大切であると前述しましたが、物件自体の履歴も非常に大切です。場合によっては、その履歴があることで買ってはいけないというケースがあります。具体的には瑕疵の存在です。
賃貸物件で殺人事件、火事、自殺、孤独死などの事故があった場合、入居者に対して告知する義務があります。入居者だけではなく、物件を売却する場合にも告知する必要があります。特に殺人事件は致命的です。物件の価値が半減してしまいます。これをもし知らないで買ってしまったら大変なことになります。
近年はインターネットの普及により、古い事故のニュースも消えずに残ってしまいます。「大島てる」のように事故物件情報を集めるサイトも登場し、マイナスの情報は消したいと依頼しても、対応してもらえません。
物件の購入時にはきちんと重要事項説明書を確認する必要があります。もし可能であれば、自分で物件名や地名でキーワード検索をかけて、過去のネガティブ情報が掲載されていないかを確認する必要があるでしょう。
実際、当社が取得した物件で過去に自殺があり売買契約時には知らされず後で分かったというケースもあります。これは売主と仲介会社が意図的に隠して売ってしまった事例です。典型的な事故物件です。
ただし、事故物件でもその事故の内容によって変わってきます。特に、孤独死は最近多発していて、当社では孤独死の物件を扱っていますが、多少家賃を安くすれば入居は決まります。自殺はもう少しリスキーですが、入居者を入れることはできます。ただし、殺人事件に関しては、テレビ等で報道されることで他の入居者が退居してしまったり、売却するときにも大きな支障が出るので避けたほうが賢明でしょう。