「高額な費用がかかる箇所」を専門家とともにチェック
Q:購入前の劣化状況、修繕状況のチェックポイントは?
築年数の経った中古物件は、どんな不具合が隠れているか分かりません。特にオーナーチェンジの物件は部屋の中を見ることができないため心配です。購入前に建物の劣化状況や修繕の状況を知るには、どこをチェックすればよいでしょうか?
A:配管関係、エレベータ、屋上防水、耐震工事、外壁塗装など高額な費用がかかる箇所の状況を、専門家を伴って確認する
中古収益物件は利益を出しやすいメリットがあると先述しました。一方でリスクがあるのも事実です。その最大のリスクは建物リスクです。中身を知らないまま中古の物件を買うことは、大きなリスクになります。大きな不具合があった場合は、修繕のために莫大な費用を要し、利益が吹き飛んでしまう恐れもあります。
実際、物件を購入したということで当社に管理を依頼されるケースがよくあります。そのなかで、取得後(当社が管理開始後)すぐに水漏れが発生し、修繕するのに数百万円から1000万円単位の工事を余儀なくされるケースが多々あります。
最も多額の費用が発生したケースでは1億8000万円の物件を取得し、配管の引き直し等で約5000万円の追加工事費用が発生しました。それらのケースでは、物件取得時にそのような不具合を把握せず、そして知らされずに物件を買ってしまっています。これでは、すでにスタートの時点で投資は失敗していると言わざるを得ません。
売買契約の際は「図面があるかどうか」も確認を
古い物件(特に昭和56年5月以前に建築確認を取った旧耐震物件)は、一級建築士等の専門家を伴って事前に建物の状況調査を行うことをおすすめします、というより必須です。
とりわけRC造の物件は修繕費用も高額になるため要注意です。当社ではすべての物件について一級建築士の事前調査(建物デューデリジェンス)を必ず行っています。特にチェックするべきポイントを列記します。
●屋上防水
●外壁塗装
●給水管・排水管といった配管関係(特にRC造で平成3年以前の物件は鉄管のケースが多く錆びてしまうことで高額の工事費用がかかるケースがあるため要注意)
●エレベータ(エレベータの籠を替えると高額になる)
●耐震工事(個別性が強いが旧耐震の物件は要注意)
[図表1]専門家のチェックが必要なポイント
以上の工事は修繕費用が高くつく傾向があります。または費用の問題ではなく修繕が不可能なケースもありますので注意が必要です。
また、これ以外に怖いのが建物の傾きです。傾きを直すとなると、規模にもよりますが数千万円単位の費用がかかるため注意が必要です。
とにかく「物件を分からないで買う」というのは非常に危険です。このような調査をすることで、そもそも物件を取得してよいかどうかの判断ができます。取得してよいとなったら次はコストの問題です。
その修繕費用を物件価格に加えた総投資額で利益が出るかどうかを判断する必要があります。
[図表2]修繕費を踏まえた取得原価の考え方
以上のような調査を行うのは必須ですが、一方で、建物の修繕履歴を可能な限り把握することもまた重要です。過去にどんなトラブルがあったか、雨漏りや漏水はないか、どんな修繕をしてきたのか、エレベータの保守状況など、これらは物件のオーナーさん(売主)から確認します。
これは物件調査の一環という側面を持ちます。たとえば、もし給湯器が20年前のもので竣工以来交換していなければ取得後すべて交換しなければなりません。防水工事を行ったのが20年前であれば取得後すぐに雨漏りがして防水工事を行わなければならなくなります。
このようにコストの問題と物件の素性を知るということの意味、さらには取得後の修繕計画を立てるという意味でも修繕履歴を把握することが重要です。
売主さんのなかには管理会社に任せきりで、ご自身で修繕履歴を把握していない人もいますので、実際に物件の状況を把握している管理会社からもヒアリングすることが大切です。できれば、その物件に詳しい不動産会社(管理会社と兼業の場合も多い)から購入することが望ましいでしょう。
また、売買契約にあたっては、図面があるかどうかを確認し、ある場合は売主から必ず引き継いでください。図面があれば物件取得後に戦略的な修繕を行いやすくなります。