前回は、「借地権の物件」を契約・売却する際の留意点を解説しました。今回は、収益物件を活用した資産形成における「築古物件」のメリット・デメリットを見ていきます。

築古物件は短期間で多額の減価償却費の計上が可能

Q:耐用年数をオーバーした物件でも利益が出る?

 

安くて利回りが高い築古物件ですが、いつまで建物がもつか、入居者が入るのかという不安があります。耐用年数をオーバーしているような古い物件でも利益は出るものでしょうか? また、建物の評価が低く融資もつきにくいのではないでしょうか?

 

 

A:築古物件は節税メリットが大きいため利益を得やすい

 

減価償却資産は、法定耐用年数によって償却期間が定められています。RC造と木造を比較すると、RC造は47年、木造は22年です。中古物件ですでに耐用年数を超過している場合は、取得から最短で4年間(木造の場合)で全額償却できるので、この観点から考えると先述の通り中古・築古の木造アパートが最も効果的に節税メリットを受けることができます。

 

金額は「大きく」、期間は「短く」が、減価償却による効果的な節税の鉄則です。たとえば物件価格1億円、建物価格5000万円(土地価格5000万円)の築23年の木造物件を購入した場合、4年間での償却になるので、年間1250万円もの減価償却費を計上でき、会計上赤字を計上できるため利益を大きく圧縮することができます。同じ築23年のRC造の物件を購入した場合は、残存耐用年数が28年になるので、年間178万円しか償却できません。P48の表を参照して税引後のキャッシュフローを見てみると、木造の625万円に対してRC造ではわずか39万円になってしまっています。

 

税引後の手取り収入が大きく取れるため、投資回収が早まり、損益分岐点が大きく下がります。そのため、耐用年数を超えた築古の木造物件は利益が出やすくなるのが最大の特徴です。

 

[図表]RC造と木造の減価償却費の違い

金融機関によっては、長期の融資が受けにくいケースも

一方、築古物件を購入するデメリットは、金融機関によっては長期間の融資を受けにくいケースがあることです。

 

ただ、日本の金融機関の姿勢としては、物件の問題ではなく、借主の属性に応じて融資を出しているので、属性が良ければ築年数に関係なく長期の融資を引ける可能性は高くなります。

 

 

また、最近は耐用年数を超えたアパートに対しても20年超の長期融資を積極的に出している金融機関も増えてきました。この背景には、バブル期(昭和60年~平成4年)に大量に建築された木造の物件がすでに耐用年数切れになっていること、国土交通省が掲げるように国が中古物件の流通を促進していることが挙げられます。

 

築古物件の場合は建物の経年劣化に伴う修繕やメンテナンスが必須であることもデメリットといえますが、こちらはあらかじめその費用を見込んだうえで収支計画を立て、投資判断をしていけば問題ありません。

 

私が考える物件の価値は築年数ではなく、どのように建築され、メンテナンスされているかという物件個別の問題です。きちんとメンテナンスをすれば築30年の木造でも入居者に受け入れられる物件になりますし、そのような物件は当社が管理しているなかにも多数あります。

 

 

本連載は、2016年7月29日刊行の書籍『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

【物件選びから融資、管理、税務、売却まで「知らなかった」ノウハウが満載! 500棟6000戸を管理し入居率98%を実現してきた不動産のプロがワンランク上の知識とテクニックを全公開】 不動産投資のノウハウに関する情報は書籍…

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