前回は、投資対象としての借地権物件のメリット・デメリットを解説しました。今回は、借地権物件を契約・売却する際の留意点を見ていきます。

定期借地権の物件の場合、資産形成には向いていない!?

実際に借地権の物件を購入するにあたっては、いくつかの注意点があります。まず借地契約の内容の確認が必須です。前述した新法の定期借地権の物件の場合は、更新ができず契約満了時には更地で土地を返還しなければならないため、借地期間の満了に向けて資産価値は減価し、売却も難しくなります。定期借地権の物件は、資産形成には向いていないので購入には慎重になるべきです。

 

また、契約期間と更新料も事前に確認します。旧法借地権物件の契約を更新する際には、更新料がかかるケースがほとんどです。更新料は物件によっては多額になりますので、注意が必要です。理想は、物件の取得時に新規で契約を巻き直してもらうことです。木造の場合は20年、RC造などの堅牢な建物の場合は30年になります。

 

 

他にも、契約期間中に建替えや売却をする場合は、地主の許可と建替え承諾料、譲渡承諾料が必要になります。それぞれ物件や契約によって異なるのであらかじめ確認が必要です。

 

そして毎月地主に払う地代です。借地契約書に金額が定められている場合もあれば、固定資産税の何倍と表記されている場合もあります。一般的な額は固定資産税の3倍程度ですが、こちらも契約によってまちまちです。

 

これらの事項については、売買契約に先行して借地契約書の中身を確認する必要があります。内容が分からなければ、不動産に詳しい弁護士等の専門家に相談してアドバイスをもらう必要があります。

売却時に、地主が譲渡承諾をしてくれないケースも…

借地のトラブルで多いのは、売却時に地主が譲渡承諾をしてくれないケースです。買主を厳しく選定して拒絶したり、地代の値上げを要求したり、高額の譲渡承諾料を要求したりと様々なケースがあります。しかし、譲渡承諾を得ずに勝手に建物を売ってしまうと、無断譲渡として地主から借地契約を解除されてしまう恐れがあります。

 

 

このように借地人が借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合で、第三者が借地権を取得しても地主に不利となる恐れがないにもかかわらず地主が承諾しないときは、借地人は裁判所に「承諾に代わる許可の裁判」を求め、地主の承諾の代わりとすることができます(借地借家法19条)。なお、この場合も裁判所が決定した額の譲渡承諾料は、地主に支払うことになります。

本連載は、2016年7月29日刊行の書籍『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

【物件選びから融資、管理、税務、売却まで「知らなかった」ノウハウが満載! 500棟6000戸を管理し入居率98%を実現してきた不動産のプロがワンランク上の知識とテクニックを全公開】 不動産投資のノウハウに関する情報は書籍…

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